将来不安から貯蓄額が前年から大幅アップ
金融広報中央委員会は「家計の金融行動に関する世論調査」の2020年の結果を発表しました。この調査は家計の資産・負債や家計設計などの状況を把握することなどを目的に毎年行われているものです。
それによると、2人以上世帯で「金融資産を保有している」と回答したのが83.9%、「金融資産を保有していない」と回答したのが16.1%となりました。同調査では金融資産について、「定期性預金・普通預金等の区分に関わらず、運用のため、または将来に備えて蓄えている部分とする。ただし、商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除く」としているので、「金融資産=将来を見据えての貯蓄」と置き換えることができるでしょう。
そのうえで、同質問の回答を経年でみていくと、ここ10年、アベノミクスなどで経済が好調だったこともあるのでしょう、「金融資産の保有率」は2013~2017年は60%代で推移。2018年は77.3%、2019年は76.4%だったのが、今回83.9%と大きく増えました(図表1)。
2019年、金融庁審議会の市場WG(ワーキンググループ)の報告書に端を発した「老後資金2000万円不足問題」、そして2020年初頭からの新型コロナウイルスの感染拡大。ここ最近の世相を反映し、将来を見据えて資産形成をしていかなければ、という志向が急激に増大した結果、金融資産の保有率が向上したと考えられるでしょう。
金融資産保有世帯に金融資産保有額を聞いたところ、平均値は1751万円、中央値は900万円となりました。昨年が平均値1537万円、中央値が800万円だったので、急激に貯蓄志向が強まった結果です。
金融資産の保有傾向を細かく見ていくと、「預貯金」は813万円、そのうち「定期性預金」が521万円。保有資産の半分は預貯金です。続くのが「有価証券」で344万円で、さらに細かく見ていくと、そのうち「株式」が182万円、投資信託が115万円、債権が47万円となっています。さらに「生命保険」が336万円、「個人年金保険」が113万円、「財形貯蓄」が50万円、「損害保険」が50万円と続きます(図表2)。
金融保有世帯に前年との金融資産残高の状況を聞くと「増えた」が27.9%と、2019年調査よりも5ポイントほど増加。一方「減った」の回答が25.9%で、2019年調査29.2%よりも3ポイントほど減少しました。
金融資産増加の理由で最も多かったのが「定例的な収入の増加」で39.9%。前年から1ポイントほど減少しました。一方で「定例的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから」が29.9%で、前年から2ポイント以上増加。危機意識から貯蓄額を増やした人が多かったようです。
また保有資産減少の理由で最も多かったのが「定例的な収入が減ったから金融資産を取り崩したから」が40.6%で前回から3ポイントアップ。一方「耐久消費財(自動車、家具、家電等)購入費用の支出があったから」が30.5%と前年より2ポイントダウン。収入減でやむを得ない事情に追い込まれた世帯が増加傾向にあります。また「株式、債権価格の低下により評価額が減少した」が26.5%と、前年から7ポイント以上もアップ。このコロナ禍、投資・運用で損害を被った人も多かったようです。
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