1年間に行われる葬儀は約130万件
父親が亡くなり、遺産を長男と次男で相続する……そんな遺産分割の話し合いの場を見てみましょう。
長男が差し出してきた亡父の貯金通帳を見て、次男が怪訝な顔を浮かべます。
次男「父さんが亡くなる前に500万円も引き出されているけど……」
長男「あぁ、それは葬儀代だ」
次男「500万円もかけて葬儀をしたのか? お金かけ過ぎだ。葬儀の内容は喪主の兄貴が決めたんだから、葬儀代も含めて遺産は折半されるべきだ」
長男「葬儀は父さんのために行ったんだから、葬儀代を差し引いた分で折半すべきだろう」
相続争いの原因はさまざまですが、「葬儀代」は問題になりがちです。実は葬儀費用を誰が負担するべきなのかに定説はなく、裁判例も分かれています。
「喪主が負担するべき」という主張に対しては、喪主だけに費用を負担させるのは不公平といえますが、どれくらい費用をかけるかを最終的に決めるのは喪主なので、費用は喪主が負担するべきと考える人もいます。
被相続人(前出の例では亡くなった父)の死後、預貯金などの可分な権利は、法定相続分(民法に定められた相続割合)に分割されて各相続人(前出の例では長男と次男)に帰属されます。そのため、ほかの相続人に断りなく預貯金を勝手に引き出してトラブルに発展するケースも多くあります。
そんな葬儀ですが、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」(平成30年)によると、年間の葬儀件数は約132万件。厚生労働省によると、この年、亡くなった人は約136万人といわれていますから、亡くなった人の97%は、葬儀業者を介した葬儀が行われた計算です。
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