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家族の快適性を守るために老人ホーム入居
今、老人ホームに入居している高齢者は、2種類に分かれます。皆さんは、それが何だかわかりますか?
一つは、自分の意思と判断で老人ホームに入居している高齢者です。もう一つは、家族の意思と判断で老人ホームに入居させられている高齢者です。
前者は、本人が進んで老人ホームでの生活を望み、後者は本人の意に反して、無理やり収容(この言い方が現実的な表現だと思います)されている高齢者です。
そして、多くの介護系の老人ホームの入居者は、後者の高齢者ばかりです。
前者の高齢者は、自宅では体験することができない利便性を求め、後者の高齢者は、子供ら家族の快適性を守るために、老人ホームに入居しています。
これが高齢者側から見た老人ホームの実態です。すべてとは言いませんが、ほとんどがこのケースです。
ただし、この視点だけ見て評論をすることは、当然ながら充分ではありません。家族、特に子世代の視点で考えなければなりません。
こういうことです。子世代にとって、元気な親が老人ホームに入居するということは、一見、何も問題はなさそうに思えます。自分の持っている資産を親がどう使おうと、それは親の自由です。親の人生なんだから、親の好きなようにすればいいのでは? と、そう思います。しかし、現実は違います。世間体を考えた場合、親が老人ホームに入っているという事実は、子供にとって「不義理な子供」と見られる可能性があります。
さらに、ことを複雑で深刻にしているのは、経済的な視点です。当てにするなと言われても、あるものは当てにします。親が老人ホームに入居する年代の子世代の多くは、50代から60代です。この世代の多くは、子育てにひと段落し、そろそろ自分の老後を考えなくてはならない世代です。今までは、子供の教育のために多額の金がかかり、今度は、自分の老後のために、金がかかることを思い知らされる世代です。そして、多くは、自分の老後資金が足りない、という現実を目の当たりにします。
だから、もし、親が残してくれる財産があるのであれば、それを“勘定に入れたい”という気持ちになることにも頷けます。ですから、親が自ら老人ホームに入居したいとか、老人ホームの入居費用は自宅を売却して賄いたい、とかと言い出すと、スムーズに「それで、いいんじゃない」とは言えません。