定年前の準備次第で老後が天国にも地獄にもなる
「生命」「健康」「資産」
人には3つの寿命がある
人には3つの寿命があるのをご存じでしょうか。
それは「生命寿命」「健康寿命」「資産寿命」です。
「生命寿命」は、まさに死ぬまでの期間です。いつ死ぬのかは誰にもわからないので、目安として平均寿命を使います。
「健康寿命」は、健康上の問題によって何らかの制限をされることなく日常生活を送れる期間です。つまり平均寿命と健康寿命の差が「健康ではない期間」になります。
平均寿命は延びているのですが、健康寿命がそこまで追いついていないのが現状です。
「資産寿命」は、老後資金がいつまでもつかということです。
定年後は就労で得る収入がなくなり、年金が収入の中心になります。年金だけで生活費が足りないときは、老後資金を取り崩す必要があります。そのため、老後資金は大切なのです。
たとえば、2000万円の老後資金があった場合、毎月5万円を取り崩したとすると、5万円×12か月×34年=2040万円。
65歳からだと98歳くらいまでは、なんとかもちます。
ところが、毎月8万円を取り崩したら、21年で2000万円を超えます(8万円×12か月×21年=2016万円)。
つまり、86歳で資産寿命がつきてしまう計算になります。
資産寿命は、できるだけ長く延ばしておきたいものです。死ぬまで老後資金がつきなければいいですね。健康寿命が先につきても困ります。不健康なまま生きることになるからです。
生命・健康・資産。この3つが同時につきるのが、理屈上は理想的でしょう。
平均寿命と希望寿命の
意外な差とは
老後が天国になるか地獄になるかは、定年前の準備にかかっているといっても過言ではありません。
「人生100年時代です。長生きのリスクを考えましょう。定年後の長い時間に備えましょう」などとセミナーでお話しすると、こんな反応が返ってくることがあります。
「備え? オレはそんなに長生きしないから大丈夫」
その根拠はどこにあるのでしょう。「医者から余命宣告をされているんですか」と、尋ねたくなってしまいます。
人がいつ死ぬかは誰にもわかりません。自分の寿命がわかっていれば人生のプランも立てやすいですが、こればかりは知りえないことです。その人は本当に長生きしないかもしれません。けれど、100歳まで生きるかもしれないのです。
「いつまで生きたいか」──いわゆる希望寿命についての調査があります。
BIGLOBEの「年齢に関するアンケート調査」(2018年)によると、希望寿命は77.1歳でした。平均寿命と比べると、ずいぶん若い年齢です。
なぜ、このような開きがあるのでしょう。
アンケートでは、約8割の人が老後に不安を感じています。つまり、「不安がある」ので「長生きしたくない」という考えで、希望寿命が短くなっているのです。たしかに早死にすれば、老後を心配する必要はありませんからね。
しかし、現実を見てください。平均寿命から考えると、希望どおりにいかない可能性は大いにあります。