「人生100年時代」といわれています。22歳から65歳まで現役で働いていた時間よりも、定年後の時間のほうが長いのです。定年後の避けては通れない課題は「お金」「健康」「生きがい」。これが定年後の3大リスクです。この「3大リスク」をうまくクリアできれば、第二の人生をバラ色にすることがきます。本連載は長尾義弘・福岡武彦著『定年の教科書 お金 健康 生きがい』(河出書房新社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

5人に1人は認知症を発症、資産を守る方法とは

認知症と高齢者の金融資産に関する研究

 

高齢者に対する金融機関の取り組み、金融商品の説明などの研究も進められています。これらの研究を「金融ジェロントロジー」、または「金融老年学(ファイナンシャルジェロントロジー)」と呼びます。

 

「ジェロントロジー」とは「老年学」の意味で、ギリシア語の「ジェロント(老人)」と「オロジー(学問)」を合成した言葉です。

 

高齢化社会の問題を解決するために、医学、看護学、工学、法学、心理学などさまざまな分野からアプローチしています。アメリカでは金融と組み合わせて「資産寿命」「健康寿命」などの研究がおこなわれてきました。そして、日本でも「高齢社会における金融・経済・医療に関する研究会」が立ち上げられています。

 

金融資産全体の約1割、200兆円超が凍結されて動かせない状態になるかもしれないという。(※写真はイメージです/PIXTA)
金融資産全体の約1割、200兆円超が凍結されて動かせない状態になるかもしれないという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

認知症と高齢者の金融資産との関係も金融ジェロントロジーで議論されている問題です。

 

両者の関係をうまくまとめた報告書があります。それは「老後2000万円問題」で大きなニュースとなった金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」です。

 

「2000万円」の部分だけクローズアップされましたが、この報告書は客観的データが詰まっているなかなかよい報告書です。老後の資産形成においても、参考になる資料がまとまっているので、一度読まれるとよいかもしれません。麻生財務大臣は報告書を受け取らなかったのですが、ネットでは見ることができます。

 

この報告書によると、1999年の時点では金融資産を持っている人の中で70歳以上の高齢者が持っている割合が18.4%でした。それが、2014年には33.6%に増えており、2035年にはなんと39.8%とほぼ倍になるということです。

 

第一生命経済研究所の「認知症患者の金融資産200兆円の未来」というレポートによると認知症患者の保有する金融資産額は、2030年には215兆円に達するそうです。家計の金融資産全体に占める割合としては、10.4%になる見込みです。

 

ということは、金融資産全体の約1割が凍結されて動かせない状態になるかもしれません。経済にとってお金は血液のようなものです。その資産が凍結されたら、日本経済にとっても大きなマイナスになるでしょう。

 

認知症になっても資産を守れるシステムをつくる

 

資産を守る一番の方法は、認知症にならないこと。そうはいっても、5人に1人は認知症を発症する時代です。自己管理だけでは完全に防ぎきれません。

 

対応策としては、認知症になったときに困らないシステムを作ることです。万が一、認知症を発病しても、資産を有効に管理できるようにしておくのです。

 

方法としては、成年後見制度、金銭信託、民事信託・家族信託などがあります。それぞれメリット・デメリットがあり、自分の状況によってベストな組み合わせを検討してください。

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定年の教科書 お金 健康 生きがい

定年の教科書 お金 健康 生きがい

長尾 義弘 福岡 武彦

河出書房新社

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