認知症になっても資産を守れるシステムは
資産を守る一番の方法は、認知症にならないこと。そうはいっても、5人に1人は認知症を発症する時代です。自己管理だけでは完全に防ぎきれません。
対応策としては、認知症になったときに困らないシステムを作ることです。万が一、認知症を発病しても、資産を有効に管理できるようにしておくのです。
方法は、成年後見制度、金銭信託、民事信託・家族信託などがあります。それぞれメリット・デメリットがあり、自分の状況によってベストな組み合わせが異なってきます。一つ一つ、その違いを見ていきましょう。
●「成年後見制度」ってどんな制度?
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神疾患などで判断能力が不十分な人が、自分に不利益な契約を結ばないよう、預貯金や不動産といった資産を保護する目的の制度です。成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。
■法定後見制度
法定後見制度は、「後見」制度、「保佐」制度、「補助」制度の3つに分かれていて、本人の判断能力の程度や事情に応じて選ぶことができます。
このとき、後見人を決めるのは家庭裁判所です。後見人になれない人の規定がありますが、それ以外は誰でもなることができます。
ただ、近年は、親族が後見人に認定されにくくなっています(親族以外の第三者の割合が約78.3%、厚生労働省「成年後見制度の現状」平成29年)。また、財産の規模が大きい場合は、弁護士や司法書士が後見人になるケースが多いといえます。
費用に関しては、成年後見人には月額2万円、成年後見監督人には1万~3万円くらいかかります。管理財産が増えると費用も増えていきます。
■任意後見制度
任意後見制度は、将来、判断能力が衰えたときに備えて、まだ判断能力がしっかりしているうちに後見人を選んでおく制度です。
自分の財産の代理人として公正証書を結びます。そして、判断が不十分になった時には、家庭裁判所が選任する「任意監督人」の許で、財産管理などの代理をします。
任意監督人は、本人が選んだ任意後見人が、財産の管理をきちんとできているのかをチェックする役割です。
実際のところ、成年後見制度は手続きが複雑なこともあり、利用は伸びていません。 また、財産の保全が目的なので、財産を有効活用するという意味では使い勝手が悪いものです。
たとえば、株式には、「これ以上持っていたら損失が拡大する」とか「いまが買い時」といった、ここぞという売買のタイミングがあります。そんなときでも売買はできません。これは不動産などでも同じです。