終活は残された家族のためだけではない
■人生の終わりに向けた準備を
人生はいつか終わる──これは確実です。
ある程度の年齢になったら、「終活」も考えましょう。
亡くなった本人は何もわかりませんが、残された配偶者や子どもはここからがたいへんなのです。
どんな宗派だった? 葬儀には誰を呼べばいいの? 友人・知人の連絡先は? 預金通帳はどこにある? 使っていない通帳が何冊も出てきた! 保険証券は? 土地の権利書は? 戸籍がわからない?
やるべきことは山ほどあり、多種多様な書類提出も必要です。手続きには期限もあります。大事なことを何も伝えず、「あとは野となれ山となれ」で旅立ってしまうと、家族は非常に困るのです。戸籍を調べたら知らない兄弟がいた、なんてことが発覚したら、相続問題の火種にもなりかねません。
「本当にきちんとした人だったね」としみじみ惜しまれるか、「最後の最後まで迷惑かけて!」と罵倒されるかは、生前の準備にかかっています。
生前の準備は残された家族のためだけでなく、自分自身の人生を振り返り、終活へ向けた気持ちの整理にもなります。
便利なグッズとして「エンディングノート」があります。さまざまな種類が市販されていますので、気に入ったものを選んでください。
ここに、自分の情報、自分の生きた内容、医療や介護についての希望、認知症になったときの希望、葬儀についての希望、財産などの情報、預貯金・保険証券などの情報、相続に関する自分の希望……などを記入します。
エンディングノートに決まった書き方はありません。書けるところから少しずつ書いていきましょう。
ただし、エンディングノートに相続の希望を書いたとしても、法的な効力は何もありませんので注意してください。
■正式な「遺言書」なら法的な効力をもつ
相続に関してしっかり残しておきたいのであれば、遺言書を準備しましょう。
エンディングノートと違い、正式な遺言書は法的な効力をもっています。正式な遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
●「自筆証書遺言」
自分で紙に書く遺言書で、誰でもできて簡単です。しかし、書き間違えや内容が曖昧だったりして無効とされることも多いので、注意しないといけません。
もっとも、民法の改正によって、自筆遺言に関する制度が少々変わりました。
財産目録は自筆ではなく、パソコンで作成したり、銀行通帳のコピーを目録として添付することが認められました。ただし、署名・押印が必要です。
また、自筆証書遺言の管理を、法務局に申請できます。相続人は相続開始後に、遺言書の写しの交付や閲覧の請求をおこなえます。遺言書の紛失・隠匿などを防ぐとともに、存在が把握できるようになりました。
これにより、自筆証書遺言はとても使いやすい制度に変わっています。
●「公正証書遺言」
公証役場で、公証人が作成します。したがって、内容について不備の可能性が低く、保管もしてもらえるので安心です。
●「秘密証書遺言」
自分で用意した遺言書を持って、2人の証人と公証役場へいき、手続きをします。遺言書の内容は公証人にもわかりませんが、遺言書が存在することを証明してもらう形式です。