「法人で所有する物件」には税制改正の影響なし
法人で所有する物件については、令和2年度税制改正による影響はありません。
ただし、法人の場合、物件の売却時には譲渡価格と取得費(購入費用=物件代金+諸費用から減価償却費累計額を差し引いた金額)との差額が法人の益金に算入されます。
例えば、5000万円でアメリカ不動産を購入し、建物価格が4000万円だったとします。4年間毎年1000万円ずつ減価償却費を計上していくと、5年目には取得費は購入費用5000万円-(1000万円×4年)=1000万円になります。つまり、建物価格部分はすべて費用化してしまい、減価償却できない土地価格だけが取得費として残っているということです(話の単純化のため諸費用は考えません)。
この物件が5年目に、購入時と同じ5000万円で売却できたとします。そのとき、取得費は1000万円なので、5000万円-1000万円=4000万円が、法人の益金として計上されます。
この法人が黒字であれば、4000万円に法人税が課されます。
売買自体で税額を減らすことは出来ないが…
減価償却費1000万円を損金(費用)として計上していた4年間は、毎年1000万円分ずつ利益が減るので、その分法人税を減らすことができました。しかし、売却時にその分課税されるので、全体で見ればトータルの課税額は変わりません。単に、課税時期の繰り延べをしているだけになります。つまりこの売買自体で税額を減らすという意味での「節税」ではありません。
しかし、課税繰り延べにより一時的にキャッシュフローが増大し法人の手元資金が増加することになるため、コロナショックのような急な現金ニーズに対する備えや、新規事業や設備投資のための資金を蓄える目的で、課税繰り延べを行う法人のニーズは多くあります。
従来、こういった課税の繰り延べには、法人加入の生命保険や航空機などを対象とした日本型オペレーティングリース商品がよく利用されていました。
しかし、法人加入の生命保険には令和元年に税法の見直しが入りました。また、航空機リースは令和2年のコロナショックによる航空需要の急減によって、リース事業の賃借人である航空会社の経営不振が懸念されるなど、不透明な状況があります。
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