一般企業では既に始まっている時間外労働の上限規制が、2024年4月から医師にも適用される。勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」とされているが、実現は困難ではないかとの指摘も。その「医師の働き方改革」を実現した医師がいる。「現場のニーズに応え、仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」という。わずか2年半で、どのように医師の5時帰宅を可能にしたのか――、その舞台裏を明らかにする。

今のうちから働き方のシミュレーションを

下記は、厚生労働省が発表している、勤務間インターバル制度を踏まえた、医師の働き方のイメージです。こういった資料等を参考にしながら、2024年度以降、現場の医師・コメディカルスタッフがどのような働き方をしていけばよいのかを今のうちからシミュレーションしておきましょう。

 

 

出典:厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」報告書 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496522.pdf
出典:厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496522.pdf

 

 

そして、現状の医師数での運営が困難であると判断したならば、今のうちから非常勤医師の補填を行うといった具体的な手立てを考えておく必要があります。2024年の実施直前になってあわてて非常勤医師を探し始めても、その時にはすでに他の病院が囲い込んでいて、該当する非常勤医師が見当たらない、という笑えない事態が発生するかもしれません。

 

今から綿密な計画を立てて、必要であれば、遅れることなく然るべき医師を確保しておくことが非常に大切なポイントとなります。

 

医師は、「副業」として他病院でのアルバイト当直やアルバイト外来に従事していることも珍しくありません。この他院での業務も労働時間に含まれます。

 

ですから、医療機関は今まで以上に副業内容について医師一人ひとりと丁寧に確認しながら、「年間残業時間960時間まで」を遵守できるよう配慮していていく必要があります。

 

また、今後は専門医取得や学会発表のための臨床研究のデータ管理やスライド作りといった「自己研鑽」の時間も、あらかじめ配慮していくことも求められます。一年を通して多くの業務を抱えている医師の場合、この「自己研鑽」の時間をどう確保するかも非常に悩ましい問題となります。

 

ただ、医師がキャリアアップしていくためにも、高い医療水準を保持していくためにも「学会発表」や「専門医取得・更新」は避けては通れません。若い働き盛りの医師の場合、1000時間以上の時間外勤務をこなしながらも、専門医取得に向けての学会発表などのための「自己研鑽」の時間も捻出する必要がでてきます。

 

その場合は、当直等の業務量を減らし、「非常勤医師の補填」で賄うという方法が考えられるかもしれません。

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地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

佐藤 文彦

中央経済社

すべての病院で、「医師の働き方改革」は可能だという。 著者の医師は「医師の働き方改革」を「コーチング」というコミュニケーションの手法を用いながら、部下の医師と一緒に何度もディスカッションを行い、いろいろな施策を…

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