「“生涯”中間管理職」を担う現在の50歳前後の世代
ご存知の通り、昭和の高度経済成長期の時代は、「上意下達」で上の者がぐいぐい引っ張っていき、部下はその意向に付き従う、そんな時代でした。
方や、平成といえば「ゆとり世代」がひとつの時代の象徴といえそうです。この世代は、一般的に仕事よりもプライベートを重視し、非常にナイーブで挫折から立ち直るが不得手と言われます。
実際に「ゆとり世代」が社会人としてデビューしてきたことにより、上司たちは、今までとは一転して20~30歳代の部下たちに対し、自らの真意を気持ちよく受け取ってもらって、きちんと実行してもらえるように、会社の意向を丁寧に伝えることを心掛け始めました。日常生活でも、さまざまな「ハラスメント」の加害者にならぬよう、細心の注意を払いつつコミュニケーションを取っているように思えます。
このように「ゆとり世代」は、「上司が“部下”に気を遣う世代」なのです。
一方、60~70歳代の経営者・幹部クラスの人達は、今でも40~50歳代の部下に対しては上意下達な物言いですし、それを受け40~50歳代の部下たちが「はい、わかりました」と二つ返事で指示を受ける姿はごく一般的です。
こちらは「“上司”の意見が絶対の世代」となります。
では、「上司が“部下”に気を遣う世代」と 「“上司”の意見が絶対の世代」の狭間はどの世代が担ってきたのでしょうか。それは、ズバリちょうど50歳前後の世代ではないかと思うのです。
私もまさしくこの世代なのです。この50歳前後の世代の行動パターンを私なりに分析すると、学生時代から一貫して「上からは上意下達で指示を受け」、「下には細心の注意を払った物言いをする」という、両方を使い分けて世の中を渡ってきました。
つまり、このちょうど50歳前後の世代は長年、日本社会の“中間管理職”的立場を担ってきたといえます。
そして、医療機関で今、何がおきているかといえば、この50歳前後の「“生涯”中間管理職世代」が、年齢的にも実際の中間管理職世代となり、これまで以上に世代間の板挟みにあい、だんだんそのことに耐えるのが辛くなってきています。
そして、実際に体力的にも残業がきつくなり、子育てといった家庭内のことも考慮して、やむを得ず病院を辞め、次々とクリニックを開業したり、もしくはクリニックで働くことを選択していく。そういった医師が、私を含め同世代には非常に増えてきています。
実は、この世代が病院を辞めるということは、その病院やその診療科のレベルが大きく下がることに直結することも少なくないのです。