コロナが理由だけではない…働き盛りの医師が病院を去る理由

2024年4月から勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」上限規制が適用されるが、実現は困難ではないかとの指摘もある。実際、ハードな病院勤務に見切りをつけ、開業や起業に踏み切るケースが多いという。現在、連載中の「『医師の働き方改革』仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」を連載中の著者の佐藤文彦氏が医療機関が抱える問題点の対処方法を解説する。

NEW!! 【医師限定】オンライン対話型セミナーはこちら

NEW!! 富裕層のための「寄付・遺贈寄付特集」はこちら

「“生涯”中間管理職」を担う現在の50歳前後の世代

ご存知の通り、昭和の高度経済成長期の時代は、「上意下達」で上の者がぐいぐい引っ張っていき、部下はその意向に付き従う、そんな時代でした。

 

方や、平成といえば「ゆとり世代」がひとつの時代の象徴といえそうです。この世代は、一般的に仕事よりもプライベートを重視し、非常にナイーブで挫折から立ち直るが不得手と言われます。

 

実際に「ゆとり世代」が社会人としてデビューしてきたことにより、上司たちは、今までとは一転して20~30歳代の部下たちに対し、自らの真意を気持ちよく受け取ってもらって、きちんと実行してもらえるように、会社の意向を丁寧に伝えることを心掛け始めました。日常生活でも、さまざまな「ハラスメント」の加害者にならぬよう、細心の注意を払いつつコミュニケーションを取っているように思えます。

 

このように「ゆとり世代」は、「上司が“部下”に気を遣う世代」なのです。

 

50歳前後の「生涯中間管理職世代」が医療機関を去り始めているという。(※写真はイメージです/PIXTA)
50歳前後の「生涯中間管理職世代」が医療機関を去り始めているという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

一方、60~70歳代の経営者・幹部クラスの人達は、今でも40~50歳代の部下に対しては上意下達な物言いですし、それを受け40~50歳代の部下たちが「はい、わかりました」と二つ返事で指示を受ける姿はごく一般的です。

 

こちらは「“上司”の意見が絶対の世代」となります。

 

では、「上司が“部下”に気を遣う世代」と 「“上司”の意見が絶対の世代」の狭間はどの世代が担ってきたのでしょうか。それは、ズバリちょうど50歳前後の世代ではないかと思うのです。

 

私もまさしくこの世代なのです。この50歳前後の世代の行動パターンを私なりに分析すると、学生時代から一貫して「上からは上意下達で指示を受け」、「下には細心の注意を払った物言いをする」という、両方を使い分けて世の中を渡ってきました。

 

つまり、このちょうど50歳前後の世代は長年、日本社会の“中間管理職”的立場を担ってきたといえます。

 

そして、医療機関で今、何がおきているかといえば、この50歳前後の「“生涯”中間管理職世代」が、年齢的にも実際の中間管理職世代となり、これまで以上に世代間の板挟みにあい、だんだんそのことに耐えるのが辛くなってきています。

 

そして、実際に体力的にも残業がきつくなり、子育てといった家庭内のことも考慮して、やむを得ず病院を辞め、次々とクリニックを開業したり、もしくはクリニックで働くことを選択していく。そういった医師が、私を含め同世代には非常に増えてきています。

 

実は、この世代が病院を辞めるということは、その病院やその診療科のレベルが大きく下がることに直結することも少なくないのです。

Basical Health産業医事務所 代表
日本糖尿病学会専門医・研修指導医、日本肥満学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医などの資格をもつ内科医・産業医。

1998年順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学 代謝内分泌学 助教などを経て、2012年41歳の若さで順天堂大学附属静岡病院 糖尿病・内分泌内科 科長(兼 准教授)に就任。同院で、「地方病院の医局員たちの残業の多さを何とか改善できないか」と考え、「医師の働き方改革」に着手。コーチングの手法を活用し、現場の要望を聴き出し、それを反映させた組織開発を独自で行う。3年目には医局員全員が定時に帰宅できる体制を作りあげる。その後、日本IBM株式会社で専属産業医を2年弱務めた後、2018年に独立。現在、健康保険組合やその関連企業での健康増進・予防医療などのコンサルタント業務を行いながら、糖尿病の外来診療、嘱託産業医としても活動する。今年度より、厚生労働省医政局委託事業「医療従事者勤務環境改善のための助言及び調査業務」委員会の委員に就任するなど、日本中の医師が安定的に働き続けられる環境作りに取り掛かっている。趣味は音楽。高校3年生時には、全日本吹奏楽コンクール(普門館)にて金賞受賞。担当楽器はチューバ。

著者紹介

連載「医師の働き方改革」仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

佐藤 文彦

中央経済社

すべての病院で、「医師の働き方改革」は可能だという。 著者の医師は「医師の働き方改革」を「コーチング」というコミュニケーションの手法を用いながら、部下の医師と一緒に何度もディスカッションを行い、いろいろな施策を…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧