医療機関は過酷な労働環境のままでいいのか
私が研修医1年目だったころは、シニアレジデントから「患者診察後、次の診察まで24時間以上空けるな」と強く指導されていました。その言葉に感化され、結局年間360日以上病院に出勤したことを今でも覚えています。当時は、ほとんどの研修医が同じような生活を送っていたため、今でも同期が集まると当時のことを懐かしく語ったりします。
ただ、時代は大きく変わりました。今の若手医師の多くは、そういった体育会系な働き方をよし、とはしてくれません。身を粉にして働くことが美学とされた昭和のような時代とは異なり、今の若手医師やコメディカルスタッフの多くは、仕事以外にも成し遂げたい夢やビジョン、家族といった大切なものを持って人生を送っているものです。
経済産業省が、従業員の健康管理に注力する企業を「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」として選定して公表していることは、ご紹介しました。そして、大手から中小まで、あらゆる企業がこれらの「健康経営」に注目しています。そして、医療機関でも「ホワイト500」等を率先して取得しているところも増えつつあります。
昨今、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、一挙に在宅勤務が浸透してきました。通勤ラッシュとは無縁で、家族との時間も増せると労働環境改善の一環として受け止められている向きもあります。そのため一般企業では、今急ピッチで在宅勤務にあった労働環境整備や就業規則変更を進めているのです。
一方、医療機関はそんな波に乗り切れず、むしろ、新型コロナウイルス感染症で今までにないような過酷な労働環境を強いられています。医療機関だけがこのまま、昭和の時代さながらの「24時間働けますか!!」的な働き方を続けてしまったら、若い人たちから敬遠される職場になってしまわないか。
そもそも、労働環境が非常に厳しいことで医学部を目指す優秀な若者が減ってしまう可能性すらあるのではないか、と医師の一人として大変危惧しております。