「糖尿病合併妊娠」「妊娠糖尿病」って?
誰でも妊娠となれば、何かと不安に思うことはたくさんあります。そんな中で突然、「妊娠糖尿病ですね」と医師に診断されたら、あなたならどうしますか?
実は、最近は高齢出産等の要因に伴って、全国的に「妊娠糖尿病」と診断される妊婦さんが増えています。ただ、きちんと産科へ通院することに加え、糖尿病専門外来にも通院することで、母児ともに、無事に出産を終える方が多いのも事実です。
このため、「妊娠糖尿病」についても、正しい知識を持って、それぞれの専門の先生の診察を受けることで、安心して出産に臨むことができます。
欧米人に比べ、日本人はインスリン分泌予備能が少なく、軽度のインスリン抵抗性が生じた程度でも、糖代謝異常を呈しやすいことが知られています。そこに、欧米化した食生活や肥満が加わり、我が国においても糖尿病患者数が飛躍的に増加しました。
そして、この糖尿病が妊娠する前からあると、母体にも胎児にも大きなリスクをもたらす可能性があります。
例えば、受胎や妊娠初期の胎芽形成期に、血糖コントロールが不良の糖尿病を有する母体の場合、流産や児の形態異常のリスクが増加します。また、母体においては、妊娠高血圧症候群や羊水過多症、巨大時による難産などが認められます。
一方で、「今まで糖尿病と言われたことがないにもかかわらず、妊娠中に始めて指摘された糖代謝異常で、糖尿病の診断基準をみたさない人」を妊娠糖尿病といいます。具体的には糖負荷試験を行った際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合に診断されます。
しかしながら、妊娠時に診断された糖代謝異常でも、空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上、随時もしくは糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上、糖尿病網膜症の存在が認められるものは、糖尿病合併妊娠と診断されます。
全妊婦の12.08%に妊娠糖尿病があることがいわれており、これに既存の糖尿病と糖尿病合併妊娠を加えると約15%の妊婦が耐糖能異常と診断されます。
どんな人が、妊娠糖尿病になりやすいのか?
もちろん、2型糖尿病のリスクとなる、過食・肥満・運動不足といった生活習慣の乱れがあることがリスクになり得ます。それ以外にも、アジア人の特徴の一つである、遺伝的に膵β細胞機能が低下している人、すなわち糖尿病の家族歴がある女性に起こりやすいことが知られています。特に、両親(ともに約3倍)・姉妹(約7倍)といった近親者に糖尿病がある場合はハイリスクといえます。
また、高齢出産や多胎妊娠、多嚢胞性卵巣症候群、そして妊娠糖尿病の既往を持っている女性なども妊娠糖尿病のリスクとなります。このため、必ずしも太っていないからと言って、妊娠糖尿病とは無縁とは言えないのが、日本人の特徴です。
そして、そもそも妊娠中は生理的にインスリン抵抗性が上昇します。妊娠前に耐糖能が正常だった女性でも、妊娠週数が進むにつれてインスリン感受性が60%程度低下することが分かっています。この原因として、脂肪量の増加と、ホルモン動態といった2つが大きな要因であるのが特徴的です。妊娠すると、痩せた妊婦でも脂肪量が当然増加します。
これは、産後の授乳や妊娠中の飢餓などに備えて妊娠初期にエネルギーの貯蔵が始まるためと考えられています。そして、妊娠により、プロゲステロンといった女性ホルモンに加え、胎盤由来の様々なホルモンが増加します。そして、これらのホルモンは概してインスリン抵抗性を高める特徴がありますが、血糖値にどの程度影響するのかは、人それぞれでかなり異なっています。