年収1600万円なら、10年間で累計3300万円超の大損
医師の皆さんは、自分がどのくらいの税金を支払っているかご存じですか? 医師の平均年収は1200万円前後といわれますが、それに対する所得税額を単純計算すると約400万円。なんと収入の1/3が税金で搾取されていることになります。高収入であるがためにこのような高額納税となってしまうのですが、この事実に気付いている医師は意外と少ないのです。
まずは、医師A氏の収支例を紹介します。
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●医師A氏(36歳、勤務医)
家族構成:本人と妻(専業主婦)の2人
年収:約1600万円(給与所得控除額、配偶者控除ほか各種控除適用前)
納税額:約330万円(取得税約217万円+住民税約113万円)
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上記の収支例でA氏の年間収入額から控除されているのは、給与所得控除、配偶者控除、生命保険・社会保険控除程度です。そのため所得額が思いのほか抑えられず、当然に税金も高額になります。
A氏が今後も節税対策をしないまま確定申告を続ければ、毎年収入の1/5もの金額を納税することになり、これが10年間続けば累計3300万円、またはそれ以上の莫大な資産を失うことになります。このような財産損失を止めるため、医師は早急に資産形成を始める必要があります。
定期預金は「宝の持ち腐れ」、株式は資産価値が不安定
資産形成といえば、昔は元本割れの心配がない定期預金への預け入れが主流でしたが、現在の超低金利では預けていても「宝の持ち腐れ」です。若干のリスクを覚悟して株式投資にチャレンジする手もありますが、このところ株価の乱高下が続いており市況を読むのが困難です。
その一方で、長い間価値が変わらず安定して保有できる資産があります。それは「不動産」です。不動産を購入・所有すれば、資産形成のみならず大幅な節税も可能になります。マイホームとして所有するのもよいですが、マンションの一室やビルを1棟購入して賃貸経営すれば、節税に加えて副収入を得ることもできます。
節税効果の検証…「2000万円の物件」を購入した場合
以下は2000万円(建物価格1400万円+土地価格600万円)の投資用不動産を購入した場合の節税シミュレーションです。
●購入資金計画
自己資金:200万円
銀行借入:1800万円(年間利息45万円〔うち土地利息13万円〕)
銀行借入に対するローン支払い額のうち、利息分については経費計上することができます。上記例の場合、土地利息以外の32万円が経費として認められます。
●建物価格の内訳
柱・壁などの躯体価格(70%)=約980万円→減価償却費約21万円
水道配管などの付帯設備価格(30%弱)=約340万円→減価償却費約70万円
不動産価格のうち、建物価格にあたる金額をさらに部材ごとに振り分け、それぞれの減価償却率を計算します。上記例の場合、約91万円(躯体約21万円+付帯設備約70万円)が経費として認められます。
これらのほか、購入前の不動産内見時にかかった交通費や宿泊代、購入時の不動産登記費用、所得後に毎月支払う建物の管理費・修繕積立金費、さらには火災保険料なども経費に計上でき、この例の場合は総額240万円以上の経費が認められることになります。
年収1600万円、賃貸経営による節税額は「約64万円」
次に、この不動産を前述のA氏が購入し、賃貸経営を行った場合のシミュレーションです。
【賃料:月額7万8000円(年額93万6000円)】
家賃収入(年額賃料)は不動産購入経費から引かれるため、最終的な経費総額は約147万円になります。その結果、A氏の納税額は以下のように変わります。
【納税額:約266万円(取得税約168万円+住民税約98万円)】
以上のように、A氏は約64万円の節税を実現できました。不動産を購入することによって納税額を減らすことができ、さらには不労所得も得られるようになります。
節税対策にも副収入にもなる不動産投資の醍醐味
不動産の価値は月日を重ねるごとに下がっていきます。たとえ新築物件を購入したとしても、5年後、10年後にはなにかしらの不具合や劣化が発生します。しかし首都圏では築40年、50年のヴィンテージマンションも現役賃貸物件として使用されています。外観の補修や耐震補強、加えて室内にリフォームを施せば、築浅物件と変わらない暮らしも可能です。
古くても手入れが行き届いた物件であれば入居者が絶えることはなく、家賃収入も安定して得られます。定期的にリフォームを施すことで不動産のバリューアップ(価値向上)を重ねていくことが大切です。もちろん、これらのリフォーム費用も経費として認められるので、忘れずに計上してください。
<まとめ>
購入・所有と同時に、節税から不労所得まで叶えることができるのが不動産投資の醍醐味です。将来的には購入した土地や建物を子どもたちに資産として残すことができますし、クリニック開業の際には賃貸契約を終了して自ら使用することも不可能ではありません。
高額所得者にとって節税対策は必至であり、若い医師の皆さんには早急に取り組んでいただきたいテーマです。とはいえ、確定申告に関する経費計上のルールは条件によって複雑に変わりますので、まずは身近な資産運用のプロに相談しましょう。
大山 一也