互助とは入居者同士、地域住民で協力すること
「職員さん、着替えを手伝ってほしいの」
「Aさんは、身体に不自由なところがないので自分でできるでしょ」
「着替えられないのよ」
「自分でやってください」
「何よ、ケチ」
「……」
このような会話は、ホームに行くとよく聞こえてきます。事情のわからない方がこの会話を断片的に聞いたとすると、「ここの介護職員は教育ができていない」ということになってしまうのではないでしょうか。そして、今の時代、SNSなどで「×ホームのひどい介護職、着替えの手伝いをしてくれない」などという事柄が拡散してしまいます。
介護とは難しいもので、着替え一つとっても、身体の問題、認知症などの精神問題、依存などによる性質の問題などにより、自力でできる、できないの判定が複雑に入り乱れています。まともな老人ホームでは、この自助の精神に基づき、「自分でできることは自分で」ということを徹底しているはずです。
どうか、老人ホームに見学などで行ったときには、この視点で介護の質を確認するようにしてください。一見、何でもリクエストに応えている老人ホームは、親切なホームに見えると思いますが、もしかすると、職員が笑顔で入居者の首を絞めて殺しているホームであるかもしれません。職員の「Aさんは自分でできますよ。自分でやってみましょう」という声かけに注目をしなければなりません。
互助とは
次に互助です。互助とは、老人ホームでの話に限定する場合は、入居者同士及び家族や地域住民らと協力して問題を解決することを言います。
そう多くはありませんが、老人ホームでは入居者同士がお互いにお互いのお手伝いをしている光景を目にします。俗世間的な言い方をすると、お節介な入居者が自分より劣っている入居者に対し、お節介をしている光景です。
車いすを職員の代わりに押している入居者とか、食事中、目の不自由な入居者のために手元に皿などを移動させて食べやすく支援をしている入居者などが、そうです。このような光景を目にすると、人によっては「職員は何も仕事をしていない」などと思うかもしれませんが、これは立派な「互助」の実践です。
とくに、支援をする入居者側にとっては、自分の役割、存在価値の確認にも繋がるので、支援する側の入居者の身体、精神状態は向上していきます。大げさに言うなら「やりがい」「生きがい」ということなのかもわかりません。