世帯数が減少し、入居者獲得の争いは激化する
住宅需要には世帯数の動向が大きく影響します。図表1は、国立社会保障・人口問題研究所が将来の世帯数を予測したものです。全国的に見ると2015年の5291万世帯が、2020年には5305万世帯に増えます。しかし、世帯数はこれがピークで、その後は減少に転じるのです。
その先、2030年には5123万世帯に減って、2035年には5000万世帯を切って4956万世帯になります。かなり急激な勢いで世帯数の減少が進行するのです。
それに対して、住宅メーカーは新築住宅をつくり続けないと経営が成り立ちませんから、世帯数が減少するなかでも新築住宅をつくり続けるため、空家率が加速度的に高まっていく――それが先の野村総合研究所の見方といっていいでしょう。
ただ、ひとつ救いなのは、これはあくまでも全国的な数値であり、首都圏を中心とする大都市圏ではそこまで事態は深刻ではないという点です。首都圏などの大都市部での賃貸住宅経営を行っている人にとっては、地方圏に比べると若干の時間的な余裕があるといってもいいかもしれません。
首都圏だけで見ると、世帯数は2025年まで増加が続きます。減少が始まるのはその後です。しかも、2035年の世帯数を2010年と比較すると2035年のほうが2.0%多くなる見込みです。全国どのブロックでも2010年と2035年を比較すると世帯数は減るのですが、首都圏だけは増えるのですから、首都圏はたいへん恵まれたブロックということができます。
しかし、ひとくちに首都圏といっても郊外部は地方圏と同じように一足早く減少が始まります。現実の賃貸住宅を考える上では、広域のデータだけではなく、ブロック内のエリアに関してよりきめ細かな分析が必要になります。