母の相続時に優遇され、父の通帳類までも管理する姉
●80代の父親は介護施設へ
相談者であるK子さんの父親は80代半ば。母親が8年前に他界して以降、ひとり暮しをしていました。ところが数年前、父親はくも膜下出血を起こして半身付随となってしまい、介護施設に入所しています。
K子さんは3人きょうだいの末っ子で、兄と姉がいます。兄は父親の土地を借りてクリニックを開業しており、その土地を相続することは全員が合意をしています。
姉とK子さんは独身で、2人とも実家を離れて仕事中心の生活をしてきましたが、K子さんは最近の姉の行動に不信感を持つようになりました。
●思い返せば、母親のときは「姉に有利な相続」だった
もとはといえば、7年前に母親が亡くなったときのことが原因だといえます。
母親は、祖父から相続した賃貸マンションを所有していました。父親名義の実家や兄が使うクリニックの土地よりも立地のいいところにあり、評価が高いのです。
母親が亡くなったとき、相続の手続きは、父親が中心に行いましたが、なぜか姉に有利な形になり、いちばん価値のある賃貸マンションの土地は、父親ではなく、姉が相続しました。
K子さんは、実家から離れた土地を相続していますが、行ったこともない場所で、現在も空き地のままにしてあります。今の住まいからも遠く、将来、家を建てて住むという展望もありません。
姉が相続した賃貸マンションの評価額は、K子さんが相続した土地の10倍以上で、毎月家賃も入りますが、K子さんの土地は収入がないだけでなく、固定資産税と草刈代が出費となります。同じ姉妹なのに、これだけの違いがあると、あとから知ったのでした。
●父の財産に関する重要書類は、すべて姉が管理
また、姉は最近、毎週のように父親の施設に通い詰めていることがわかり、母親の相続のように、姉に画策されるのではないかと、K子さんが1人で相談に来られました。
父親の通帳などの重要書類は空き家となっている実家にはなく、おそらく、姉が保管していると思われるため、今から、銀行口座やクレジットカードの状況を確認する方法があるか知りたいということでした。
父親は年齢的なところから、認知気味であり、印鑑カードや保険証なども姉が管理をしていて、いちばん近くに住む兄にも預けていません。
本来は長男で、いちばん近くに住む兄が、公平な立場で財産管理をすれば収まるところでしょうが、仕事が忙しく、こうしたことには消極的で、積極的な姉に任せたほうが楽という態度で、頼りにできません。
K子さんがいちばん許せないと思えるのは、いいとこどりをしている姉なのに、「妹とは仲がよくて、何の問題もない」と親戚など周辺に言っていることだそうです。姉にはまったくK子さんの心情を汲んでいる様子はありません。
◆姉妹とはいえ一心同体ではない、しっかり自己主張を
筆者からは、すぐにでも、これからのサポート体制や財産内容をきょうだいで確認し、共有しておくことをお勧めしました。生前ですので、本人か本人の委任状により、取引の確認をしておくようにします。
さらに、もめないために、母親のときの遺産分割も含めて公平な遺産分割案を作り、父親に公正証書遺言を作ってもらうことが望ましいといえます。
この対策がうまく進まない場合は、財産管理を主目的とするため、父親に後見人を立てることも検討するようにアドバイスしました。
助け合うことが姉妹の理想形なのに、あまりにも酷な状況ではないでしょうか。K子さんの人生はまだ数十年はあると思われますから、賢く対処し、争わずに自分を守るため、「姉は姉、自分は自分」という立ち位置を確保するような決断が必要でしょう。
両親合わせた財産で公平な遺産分割も必要
きょうだいでも別の財産になるようにする
●注意ポイント
きょうだいとは争いたくないのが人情ながら、不満や不信感を抱えて、何十年も仲良くできないのもまた事実です。自分が納得できるところで決断しましょう。
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