クライアントに寄り添い共感する弁護士の仕事
「自動化されやすい業務」と「自動化されにくい業務」
AIやITの進歩により今後自動化されていく可能性の高い業務も数多くありますが、一方で、技術が進歩したとしても自動化される可能性が低い業務もあります。
ここでは弁護士、公認会計士のそれぞれの仕事について、自動化の可能性や影響を考えていきます。
弁護士業務の自動化の可能性
弁護士の主な業務には、裁判・交渉、法律相談、契約書作成、契約書レビューなどが挙げられます。
このうち、契約書作成と契約書のレビューは、秘密保持契約や業務委託契約など、定型的なものであればパソコンでの単純作業で終わることが多く、すでに自動で契約書の作成やレビューを行うサービスが存在しています。料金は数千円程度で、現時点で利用できる契約内容は限定的ですが、今後はその種類も増えていくでしょう。
一方で、代理人として法廷に立つことや、同席が必要な裁判や交渉の仕事は、Body(物理的実体、法的権利帰属主体)の要素が求められるので、自動化は難しいと思われます。
法律相談に関しては、すでに無料で法律相談に応えるサイトがありますが、あくまでも画面の向こうで「人」が対応しているもので、自動化には至っていません。ただし、すでにアメリカではAI弁護士が破産や倒産分野の法的な質問への回答を行う例もあり、スマートフォンやスマートスピーカーが法律相談に応える未来もそう遠くないかもしれません。最初は信頼性が問われるかもしれませんが、精度が上がるとともに信頼性も向上していく可能性はあります。
とはいえ、自動化できる法律相談は、ある程度単純なものに限られます。複雑な要素が絡む法律相談や、前例がない法律相談など、Think の要素が求められる法律相談はまだまだAIや機械での対応は難しいといえます。
また、弁護士の仕事は、人生を左右する大きな悩みを抱えたクライアントを相手にすることが多いため、Humanity の要素が強く求められます。クライアントの気持ちに寄り添い共感する姿勢は、悩みを抱える人に大きな安心とエネルギーを与えます。これはAIや機械には代替できない、人間ならではの力です。
また、法的には権利を主張できたとしても、クライアントの今後の人生における人間関係を考えると、やみくもに権利を主張すべきでないという助言が必要な場合もあります。契約書の作成においては、他の案件の兼ね合いを考えると、この契約ではむしろ相手に有利な契約としたほうがよいといったケースもあります。そういった人と人との心の機微を汲み取って綿密にその後の進め方を決めるといった業務は、Humanity の要素が強く求められるものであり、当面はAIや機械が代替することは難しいと考えます。