AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。ITやAIの技術革新の波は今後もとどまることはない。とはいえ、打つ手はあると公認会計士・税理士の藤田耕司氏は語る。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

求められる高いコミュニケーション能力や判断力

公認会計士業務の自動化の可能性

 

公認会計士の主な業務は監査です。監査の仕事は、クライアントの会計帳簿や決算書が正確に作成されているかどうかや、それらの会計帳簿や決算書の作成過程で適切な業務フローが構築されているかどうかといった内部統制の状況を検証することであり、その検証結果を監査報告書という形で報告します。

 

藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)
藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)

監査の過程では多くの資料作成が必要ですが、エクセルやワードの加工作業、データのダウンロード作業、定型の文言や数字の入力作業、記載ミスのチェックなどの単純作業もあり、こうした部分はシステム化やRPAの活用で効率化されていくでしょう。紙の資料のチェック作業や入力作業、情報検索や抽出作業も、スキャナーやOCRで情報をデータ化すれば、自動化できる部分は増え、大幅に効率化される可能性があります。

 

手作業の業務をシステム化して効率化を図る動きは、すでに大手監査法人を中心に行われており、定型化された単純作業はいずれ自動化されていくでしょう。

 

一方で、定形的ではない取引や前例のない取引に関する判断、将来の見積もりに関する判断、経営リスクの判断といった業務はThink の要素が求められ、AIや機械による自動化は当面は難しいといえます。

 

また、公認会計士に求められる重要な能力の一つがコミュニケーション能力です。

 

監査は限られた時間内でクライアントから帳簿と帳簿作成の基礎資料を入手して検証を進めなければなりません。根本的なクライアントとの関係作りや資料入手のための依頼の仕方、伝え方が悪ければ、短期間で十分な資料の入手が難しくなります。

 

また、何らかの誤りの発見時には、その修正依頼も必要ですが、その際は、クライアントの納得が得られるように、論理的かつ説得力のある伝え方をしなければなりません。このようなコミュニケーション能力の背景にはThink やHumanity の要素が求められ、AIや機械による自動化が難しい部分です。

 

また、そもそも監査の仕事は公認会計士としての資格が必要になります。AIや機械は法的な権利帰属の主体にならないので、Body の要素として人間の存在が不可欠です。

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。 起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始…

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