損得抜きに介護という仕事を取り組む不幸
この、介護保険にあるダブルスタンダードの考えが老人ホームを苦しめ、介護職員を苦しめている、ということになるのではないでしょうか? 介護職員は、このダブルスタンダードにより、いったい自分たちは何をしなければならないのか、これ以上どうしろと言うのか、これ以上何もできないのに!という気持ちにさいなまれ、嫌気がさして辞めていきます。
当然、老人ホーム側に確たるしかるべき方針があったり、経営哲学や信念があるような場合は職員を説得することができますが、信念もくそもないホームで働いている介護職員は、ただただ右往左往するだけです。
挙句の果てには、自分自身でも何が正しいのかがわからなくなり、何も考えないことが最良の方法であるという結論に至って思考を止めてしまいます。思考が止まると、何も見えなくなり聞こえなくなります。まさに、「見猿、言わ猿、聞か猿」の状況です。そして末期症状になると、「何でもよい」となり、「適当にやっておけばよい」ということになっていきます。
私が現役の介護職員だったころ、私の周りにも「自分のこともままならないのだから、入居者のことなど考えてはいられない」という結論に至り、退職していった介護職員がいました。まさに、神経をすり減らして、疲れ果てて辞めていきました。このような介護職員の多くは、損得抜きに介護という仕事に取り組んでいた人たちだったと思います。
心ある介護職員は、この葛藤の中で積んだり崩したりを繰り返し、最終的に老人ホームに身を置いていると自分自身がダメになってしまうと結論づけ、介護を辞めていくことになるのです。業界としては非常にもったいない人材の流出だと思います。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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