介護保険制度は税金で支えられている
真面目に入居者の世話をすると儲からないという矛盾
皆さんは老人ホームの歴史をご存じでしょうか? 老人ホームなどたいそうな歴史はありませんが、ここで少し確認していきたいと思います。
まず、介護保険制度が成立した2000年よりも前の老人ホームはどうだったのでしょうか。それまでの老人ホームは、多少の例外はありますが、行政が事実上運営していた特別養護老人ホームと大手企業が中心になって運営していた高級老人ホームしかありませんでした。
特別養護老人ホームは、今さら説明するまでもありませんが、大手企業が運営していた高級老人ホームはどちらかというと収益目的ではなく、企業の社会貢献の意味合いが強く、社会に対する企業のイメージアップなどを目的とした広告宣伝のような位置づけだったはずです。つまり、2000年以前までの「特養」も含めた老人ホームは、儲かる儲からないは無関係の事業だったと私は理解しています。
それが2000年、介護保険制度がスタートするや否や、ビジネスチャンスと見て民間事業者が大挙して参入し、ビジネスとして一気に進化していきました。この流れの中で、誰が仕組んだのか、介護事業は「サービス業である」という部分だけが誇張され、いつの間にか、利用者や入居者のことを「お客様」「利用者様」と「様」付けで呼ぶルールが定着し、やがて、その「お客様」が傍若無人なふるまいを始めても、「お客様は神様です」と言って、そのリクエストに応えてきました。
しかし、介護保険制度を支えているかなりの部分は公的費用、つまり税金です。利用者や入居者は、わずかな自己負担で介護保険という公的サービスを受けているにすぎません。言うまでもありませんが、税金とは所得の多い人や企業ほど多く納税する仕組みになっています。しかし、多く納税したからと言って特別なサービスを受けることはできません。
さらに、サービスの質は、納税額の多い少ないにかかわらず誰しも等しく受けることができるのです。だからそこには、お互いに節度というか礼儀というか品格というべきか、とにかく「わきまえる」ということが重要なのです。