人手不足、減らない残業、かさむ人材採用コスト…さまざまな問題に苦しむ日本の中小企業。客観的データから見ても、日本の中小企業の経営が思わしくないことは明らかです。なぜこのような事態となっているのでしょうか? 原因を示すとともに、経営改善のためのソリューションを考えます。※本連載は田牧大祐氏、佐々木伸明氏の共著『中小企業経営者のための「RPA」入門』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

コスト、人材、残業…増大する悩みの「根本原因」

私たちの顧問先の多くは中小企業なので、中小企業経営者の悩みを聞く機会が数多くあります。

 

「人件費といった固定費負担が重い」「人手不足なのに、採用がうまくいかないうえに、辞める人が多い」「人材紹介会社に支払う費用が高い」「働き方改革を目指して、ムダな業務を減らせと言っているが、残業がまったく減らない」―このように最近では、コスト・人材・進まない働き方改革といったあたりに悩みが集中しているように感じます。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

こういった悩みが生じるのは、なぜでしょうか。それを考えるための材料として、まずは中小企業に関連するデータを見てみましょう。

「1人当たりの労働生産性」は先進7ヵ国中、最下位

日本の労働生産性が低いといわれるようになってから、すでに50年の歳月が経っています。労働生産性とは、1人の労働者が生み出す付加価値額です。

 

公益財団法人日本生産性本部が2019年に公表した「労働生産性の国際比較」によると、OECD(経済協力開発機構)データに基づく2018年の時間当たりの労働生産性を、先進7ヵ国(米、英、仏、独、伊、加、日)で比較すると、データが取得可能な1970年以降、日本はずっと最下位だということです。

 

しかし日本のメーカーの工場は、オートメーション化が進み、極めて生産性が高そうなイメージがあります。そのため、労働生産性が低いといわれても腑に落ちません。では非製造業が足を引っ張っているのでしょうか。しかしデータを見る限りでは、製造業と非製造業の生産性に大差はありません。

 

大きな差があるのは、大企業と中小企業です。これは、大企業には労働生産性を上げるための投資をする余力があり、それを可能とする人材が採用でき、さらには価格決定権をもっているといった理由が考えられます。

 

要するに中小企業には、ハンデキャップがあるということです。しかし不利とはいえ中小企業も規模に適した生産性向上策を考えないと、今後も大企業との労働生産性の差は埋まりません。

 

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田牧 大祐

佐々木 伸明

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