業務をロボット化する「RPA」…独自のメリットとは?
日本では数年前から普及が始まり、Webや雑誌などで頻繁に取り上げられるようになった「RPA」。コスト削減や効率化に大きく貢献し、生産性を向上させると注目を集めています。簡単にいうと、パソコンのなかにいるロボットに人の手作業を代行させる技術です。
とはいえ、業務を自動化する手段はRPAだけではありません。代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。
①自動化するシステムを開発する
②Excelでマクロを作成する
③AIを活用する
RPAとこれらの違いを考えることで、RPAの特徴がさらにはっきりと分かります。
RPAと「通常のシステム開発」の比較
まずシステム開発との違いです。
RPAツールそのもののインストールは、マニュアルに従って設定していくだけです。特にRDA(デスクトップ型のRPA)であれば、パソコンのソフトウェアですから、Microsoft Officeなどをインストールできる方であれば、RDAも難しくないはずです。
ツールそのものも簡単で、実際に動作するロボットの作成も、業務操作を覚えさせるだけです。
一方、通常のシステム開発は多くの場合、膨大なコストがかかります。また導入には、システム部門やユーザー部門の協力が不可欠ですので、従業員の負担が大きくなります。専用に作ったシステムであれば、マニュアル作りや操作教育などが必要になることがあります。その代わり、その会社の業務に合わせた柔軟な作り方ができます。
導入が終わったあとも、日々使い続けていると変更や更新が必要になります。RPAの場合はプログラミングなしでロボットの機能を変更することが可能です。場合によってはプロセスファイルを修正することもありますが、通常のプログラミングに比べるとかなり簡単です。開発したシステムの場合は、開発した会社に変更依頼をすることになります。これは別途追加費用がかかるのが普通であり、内容によっては多くの時間もかかります。
次に、RPAのそもそもの特徴である「システムとシステムをつなぐ」ということについて考えてみます。
これは、あるシステムのアウトプットを後続のシステムにインプットするということです。つまりデータを介して前システムと後システムをつなぐということです。通常のシステム開発ではそれができていないので、人間が前システムのアウトプットを後システムに手入力する作業、すなわち転記が発生していたわけです。
画面に表示していたデータをファイルに書き出し、後続のシステムはそのファイルを読み込むということを、システムとシステムをつなぐための手作業の分だけ開発するには、それぞれに初期コストと従業員の負荷がかかります。とても現実的ではありません。その点、RPAであればロボットに操作を教えるだけですから、簡単にシステムとシステムをつなぐための手作業をなくせます。
プログラミングスキル不要…「Excelのマクロ」と比較
次にExcelのマクロですが、まずできること(機能)が違います。
データの集計、グラフの作成、グラフや表の印刷はどちらも簡単にできます。Microsoft Officeを用いた文書の作成、フォルダの作成、メールの受信、Webページからの情報取得については、RPAではロボットを作るだけでできますが、マクロではプログラミングのスキルが必要となります。
会計ソフトなど、ほかのアプリケーションソフトとの連携については、RPAはそもそもそれを得意とするのに対し、マクロではプログラミングスキルが必要ですし、連携できない場合もあります。
機能以外のことで比較すると、効率化できる範囲が、マクロではExcelを含むOfficeアプリケーションおよびそれで作成したドキュメント内に留まりますが、RPAではパソコンで行う操作すべてが対象になります。非定型業務の効率化については、マクロでは不可能ですが、RPAでは工夫次第で可能です。大量データを処理させる場合には、マクロではかなり時間がかかりますが、RPAは製品にもよりますが、一般的にマクロよりは高速です(ただし「画像認識型」のRPAは高速とは言い難いです)。
プログラミングスキルについては、マクロは当然必要ですが、RPAではほとんどの製品で不要です。マクロの場合、最も問題になるのが、このプログラミングスキルです。
マクロが含まれるExcelシートをシステム部門等が作成してユーザー部門に配付するケースもありますが、多くの場合、社内で使われているマクロは、ユーザーが日々の業務を便利にするために自分自身で開発したものです。開発者が自分だけで使うのならいいのですが、いつの間にか人から人に伝わって、気がついたら多くの従業員が使っていたということがよくあります。
そうなると変更や機能追加の要望が作った人に集中します。もちろん断ることもできますが、このような人はマクロを作るのが好きなことが多いので、つい引き受けてしまいます。
ところがマクロといえどもプログラムですから、次々に変更や機能を加えていくうちにどんどん複雑化して、そのうちに開発者以外は誰も直せなくなってしまいます。気がつけば、作った人はマクロのメンテナンスに追われるようになってしまいがちです。
もともとは自分の日々の業務を効率化するために作ったマクロだったのに、かえって忙しくなったうえに、それをほかの人に引き継げなくなってしまうのです。これは極めてストレスフルな状態なのはいうまでもありません。
システム部門がすべてのマクロを用意して、メンテナンスの運用なども含めてきちっとルール化しているのであれば、マクロを使うメリットがありますが、中小企業でそこまでの運用は難しいと思います。そのうえ、RPAよりも機能も業務範囲も限られるのであれば、マクロでの業務自動化は得策ではないといっていいでしょう。
その点、RPAのロボットはその気になれば誰でも作ることができます。これはRPAの大きな優位点です。
パート主婦から文系大学生まで…簡単に作成できるRPA
WinAutomationを例に説明します。WinAutomationではロボットに操作を教えるためのエディタとして「プロセス・デザイナー」という画面が用意されています。
プロセス・デザイナーには、ロボットが実行可能なアクションが豊富に用意されており、それらが検索できます。ユーザーは実行したいアクションを探し選択して、必要な項目を入力します。あとは同じ手順で業務に必要なアクションを設定するだけです。
プロセス・デザイナーのメインエリア(図表3)には設定したアクションが表示されるので、どのような操作が行われるかは、それを見れば分かります。アクションをダブルクリックすれば設定画面が開き、細かく設定できます。
ロボットを作ること自体はとても簡単ですが、ロボットにやらせるのであれば、人の手順よりも最適な手順がある場合があります。また一度登録したロボットを変更するには多少の知識やノウハウが必要です。
そこで私たちはロボットを作ってメンテナンスするための勉強会を開催しています。3~6日のコースですが、参加した会計事務所の総務部の方が、会計ソフトから必要なデータをダウンロードしてExcelに取り込み、決算関連のレポートを作成するというロボットを簡単に作りました。
その方は、プログラミング経験はおろかExcelのマクロさえ作ったことがなく、パソコンは苦手だと言っていたのです。
実際、学歴も職歴も専攻もまったく関係なくロボットは作れます。例えば、ある会計事務所では、新入社員が入社3ヵ月でロボットを作っています。パートの主婦にロボット作成を任せている会計事務所もあります。
筆者の研究所では大学の文学部に通う学生アルバイトがロボットを作っています。彼女は週2回の勤務ですが、なんの問題もなくロボットを作ってくれます。このように、その気さえあれば誰でもロボットを作り、メンテナンスもできます。
田牧 大祐
株式会社 ASAHI Accounting Robot研究所 CEO
佐々木 伸明
株式会社ASAHI Accounting Robot研究所 CTO
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