「株~、株~」連呼する認知症父に「蕪」を献上した結果…

「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

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認知症父がお金の心配する原因とは

作戦失敗!「株」と「蕪」

 

最近、お金の話ばかりをするようになったじーじ。どうやら自分が亡くなったあと、残される私たちのお金のことを心配しているようだが、心配している相手は、来月還暦を迎える私(あ~やだやだ)と、還暦に手が届きそうな弟と、アラサーの孫である。

 

ありがたいことではあるが、じーじはお金のことになると認知星人のパワーが倍増され、解決不能と思われることを要求してくるので私にとっては少々厄介なのである。

 

認知症父の「おい、株を買ってこい」との指令に対して……。(※写真はイメージです/PIXTA)
認知症父の「おい、株を買ってこい」との指令に対して……。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ある日、夕飯の準備ができたのでじーじに声をかけたが、両手で頭を抱えて微動だにせず返事もしない。じーじが認知星人に変身する際には、必ず決まったポーズをするのだが、この日のポーズはいつもとちょっと違う。まさか、新しい認知星と交信しているのか!などと思っていると、突然、

 

「大変だ、株で7千500万円の損失を出してしまった。どうしたらこの損失分を補填できるのか……」

 

と、まるで、会社の経理担当者のような発言。だが、じーじは株の売買はしていないが、そこは否定せず……。

 

「そうかぁ。それは大変だ! まあ、夕飯を食べてからゆっくり考えようね」と、話をそらしてみたものの、食事の途中でも「株~、株~」と株を連呼。じーじの大好きなにごり酒を献上しても「株~、株~」と一向に株から離れる様子はない。ついには、朝刊を取りに行き、ラインマーカーを片手に、株価の掲載欄にピンクや黄色の線を引き、じっと見つめては、またまた、頭を抱えてしまうではないか。

 

ここで私が何かを言うと、事件が勃発しそうなので、聞こえないふりをしてみた。

 

その後も「株~、株~」と言っていたがこの日は何事も起こらなかった。しかし、その後もほぼ毎日、「株~、株~」と言いながら頭を抱えていたが、ついに「おい、株を買ってこい」との指令が!

 

……ピカッとひらめいた!

 

指令を受けた私は、即スーパーに行き「蕪」を買い、じーじに「蕪買ってきたよ」と差し出すと、「味噌汁にしろ」とじーじ。やった! これで「株~、株~」の呪縛から逃れられると思ったのもつかの間。また、「株~、株~」を連呼。

 

今回の作戦は見事に失敗に終わったのであった。

医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

埼玉県生まれ。博報堂勤務を経て、埼玉県内の介護事業会社勤務。医療福祉接遇インストラクター、東京都福祉サービス評価推進機構評価者。2001年より成長期の大手介護事業会社において、広告宣伝室室長として、社外向けの広報誌の作成、入居者促進業務に携わる。
2015年、株式会社ケー・アール・プランニング設立。編集プロダクションとして介護・福祉を専門とした雑誌の編集を行う傍ら、接遇マナーインストラクターとして、介護付有料老人ホームやデイサービス等で介護の現場に即した研修を行っている。

著者紹介

連載見つめてひらめく介護のかたち「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

黒川 玲子

海竜社

わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状が現れた時のじーじを 「認知症のスイッチが入っ…

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