認知症の父と「車で往復6時間」走行中にドアを開けるかも…

「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

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認知症父「墓を移すぞ、坊さん呼んでこい」

300万の胸騒ぎ

 

じーじは、筋力が落ちた高齢者特有のすり足で歩くので足音がしない。真後ろにいても気がつかず、振り返るとじーじがいて驚くことがしばしばあるのだが、この日は背筋に妖気を感じた。振り返ると、スーハー、スーハーと鼻息も荒く、明らかに戦闘態勢状態。

 

「おい、墓を移すぞ」とじーじ。そういえば半月前にもそんなことを言っていたなあと思い、「どうしたの?」と聞き返すと「あそこの霊園に墓を置いておくわけにはいかんのだ。大変なことになるから、まずは、坊さんを呼んでこい」。

 

出た! 認知星人の口癖「大変なことになる」。

 

よくよく話を聞いてみると、霊園が取り壊されるらしいのでその前にお墓を移す必要があると言っている。しかし、わが家のお墓は市営霊園で、取り壊される話など聞いたこともない。「そっか。お正月が明けたらお坊さんに連絡するね」と言った途端、認知星人ダース・ベイダー版のスイッチON!

 

「正月、正月って正月がどうした。坊主がいなけりゃ葬式もできん。それより、お前は葬式に必要な300万円は持っているのか? それに仏壇もだ。今あるあんな仏壇は捨ててしまわなくてはいかん」

 

まるで連想ゲームだ!と思っていると、ついには「ねーちゃん(叔母)の葬式には300万円もかかって、大変なことになったのを知らないのか。葬式代に300万円、300万円……」と、かなり興奮した様子でまくしたてるじーじ。お葬式の費用が心配らしい。

 

叔母の葬儀代は300万円もかかっていないが、そんなことを言っても納得するとは思えない。「今はそんなに費用はかからないから心配しなくて大丈夫だよ」と言うと、「まったく、あ~たは支離滅裂なことをおっしゃいますね」と、ついには敬語になる始末。

 

……ピカッとひらめいた!

 

私は仕事の関係上、ご葬儀の会社の知り合いがいっぱいいるので、その方たちの名刺をずら~っと、机の上に並べてみた。すると、「おー、お前も偉くなったもんだ、こんなに葬儀屋の知り合いがいるのか、じゃあ300万円はいらないな」と、あっさり笑顔になったじーじであった。

医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

埼玉県生まれ。博報堂勤務を経て、埼玉県内の介護事業会社勤務。医療福祉接遇インストラクター、東京都福祉サービス評価推進機構評価者。2001年より成長期の大手介護事業会社において、広告宣伝室室長として、社外向けの広報誌の作成、入居者促進業務に携わる。
2015年、株式会社ケー・アール・プランニング設立。編集プロダクションとして介護・福祉を専門とした雑誌の編集を行う傍ら、接遇マナーインストラクターとして、介護付有料老人ホームやデイサービス等で介護の現場に即した研修を行っている。

著者紹介

連載見つめてひらめく介護のかたち「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

黒川 玲子

海竜社

わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状が現れた時のじーじを 「認知症のスイッチが入っ…

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