相続発生時、遺言や遺書の有効性についてトラブルが発生するケースが多発しています。知識を身につけ、もしもの時に備えましょう。今回は事例から、日付なしの遺言書が有効とみなされることはあるのか、見ていきましょう。

福岡高等裁判所、昭和45年7月31日決定によると…

『佐賀家庭裁判所唐津支部の検認を経た均作成名義の遺言書によると、「私が全財産を三男浩へ譲渡す家出人相ぞく無浩渡ス」旨の記載があるけれども、日付としては昭和三五年八月とあるだけで日の記載を欠いており、この点において右遺言書は自筆証書遺言の要件を欠き有効な遺言とみることはできないので、被相続人均が遺産全部を抗告人浩に遺贈したものとみることはできない。』

 

『しかしながら、均が作成したと認むべき右遺言書の記載、原審における抗告人、相手方馬場篤及び馬場明審問の結果、原審鑑定人住友順一、西山三郎の鑑定の結果並びに記録添付の戸籍謄本、登記簿謄本を総合すると、

 

被相続人馬場均(明治一八年生れ)は、本籍地において農業を経営してきたものであるが、昭和三三年から昭和三五年二月二九日までの間数回にわたりその三男である抗告人に対し原審判添付第二目録記載の田、山林、原野、宅地及び居住家屋(以下、本件第二物件と称す。右物件の相続開始時における評価額は金三九三万七、〇五〇円)を贈与したこと、

 

本件第二物件は金額にして均の所有していた不動産の約三分の二に相当し、抗告人の法定相続分をはるかにこえるものであること、

 

均の長男であつた相手方篤は、当時均とは独立し肩書住所に居住して瓦製造業を営んでいたこと、

 

同人の二男である明もまた均とは独立して別居し、当時郵便局に勤務して農業には従事していなかつたこと、

 

抗告人は当時均及びその妻馬場ハツと同居して農耕に従事していたものであることを認めることができ、右事実によれば、均は自己の営んできた農業を抗告人に継がせる意思であつたことを推認することができる。』

 

『しかして、これら認定事実によれば、被相続人均は本件第二物件を抗告人に贈与するに際し、これらの特別受益の持戻免除の意思を表示していたものと認めるのが相当である。』

 

※本記事は、北村亮典氏監修「相続・離婚法律相談」掲載の記事を転載・再作成したものです。

 

 

北村 亮典

こすぎ法律事務所弁護士

 

 

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