(※画像はイメージです/PIXTA)

「相続」はトラブルに発展しやすいもの。知識を身につけ、もしものときに備えておく必要があります。今回は、こすぎ法律事務所弁護士の北村亮典氏が、「相続分の譲渡」について解説していきます。

叔母の申し出「遺産はすべて私が相続したいから…」

Q.私の叔父が亡くなりました。

叔父は、夫も子供もいなかったため、その妹である私の叔母ふたり私の母が相続人となったのですが、私の母は既に亡くなっているため、私が代襲相続人として相続人の一人となっています。

生前の叔父の面倒や死後の葬儀の取りしきりなどは、すべて叔母のうちの一人がやっていたため、その叔母からは「遺産はすべて私が相続したいから、あなたの相続分を譲渡してもらえないか」という連絡が来ました。

私としては、その叔母に相続分を譲渡しても良いと考えていますが、相続分の譲渡とはそもそも何なのでしょうか。

「相続分の譲渡」とは一体何なのか

A.相続分の譲渡とは、

 

「積極財産のみならず消極財産を含めた遺産全体に対して各共同相続人の有する包括的相続分、あるいは法律上の地位」を譲渡するもの

 

というのが法律の解釈です。「相続人としての地位」をすべて譲り渡すもの、といい換えることもできるでしょう。

 

この相続分の譲渡は、有償でも無償でも可能ですし、どのような方式で行っても良いとされています。実務上は「相続分譲渡証書」というものに署名・実印を押印して行われるのが一般的です。

 

また、相続分の一部のみを譲渡することも可能ですし、相続人以外の者(第三者)に対して譲渡することも可能です。

 

相続分の譲渡と比較されるのが、相続放棄という制度ですが、相続分の放棄と比べても上記のように相続分の譲渡の方が色々と柔軟な対応が可能です。

 

ただし、相続分の譲渡が可能なのは「遺産分割協議の成立前」となっており、遺産分割が成立した後に行うことはできないとされています。また、後述のように、相続分の譲渡には借金の放棄までの効果はありません。

相続分=「積極財産」「消極財産」どちらも該当する

相続分の譲渡がなされると、譲渡人の相続分が無くなり、譲受人にその相続分がすべて移転します。

 

たとえば、相続分の譲受人が、共同相続人の1人である場合には、譲受人本来の相続分に、譲渡した人の相続分が加わることになります。

 

相続分の譲渡は積極財産と消極財産の双方を譲渡するものではありますが、しかし、相続債務(被相続人の生前の借金)があった場合、相続分の譲渡をしても、この責任は免れることはできない、ということとなっていますので、この点は注意が必要です。

 

実務的には、相続分の譲渡をした場合は、相続分を譲り受けた人が責任を持って相続債務の弁済にも対応しますが、万が一、債権者から相続分の譲渡をした人に請求が来てしまい、支払わざるを得なかったような場合には、その後に相続分の譲渡人から譲受人に対して返済した分の求償をするということになります。

 

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