日本人のほとんどの人は「一生住み続ける」ことを前提に家やマンションを買っている。そのために何千万円というお金を金融機関から借りているる。しかし、じつはほとんどの分譲マンションは、廃墟化への時限爆弾を抱えているという。マンションの廃墟化を防ぐ手立ては何か。本連載は榊淳司著『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)の一部を抜粋し、再編集したものです

新築マンション購入時、35年後は考えない

ただ、アメリカでは、かつて低所得者に対して盛んにこのノンリコースの住宅ローンを貸しだし、それが大量に焦げついたサブプライム問題というのが起こった。それが最終的には2008年9月のリーマン・ブラザーズ倒産につながったとされている。日本では住宅ローンで、このノンリコースでの融資がおこなわれることはまずない。

 

日本の金融機関には、物件を審査する能力がないと言われている。また、リスクの高いノンリコースでの融資をおこなうほどの勇気がないのだろう。

 

35年後に手に入るのは「築35年の老朽マンション」

 

では、35年後に無事に住宅ローンを全額返済し終えた場合はどうなるのか。

 

もちろん、マンションの購入者は完全な所有権を得ることになる。乙区に抵当権を設定している金融機関は、それを実行しえなくなる。そこでやっと、購入者は完全な所有権を手にすることになる。

 

しかし、そこで完全に所有権を得たマンションは、築35年になっているのだ。これも逃れ難い真実である。

 

築35年のマンションは、流通(中古)市場でも多く売り出されている。もちろん、築5年や7年の中古マンションと比較すると、かなり値段はお安めである。当然だろう。築5年に比べて、築35年は30年分老朽化しているのだ。

 

築35年なら、通常の場合は大規模修繕工事を2度ほど経ている。

 

さらに、新築時に購入してずっと住んでいる人の割合は、各マンションによって異なるが、彼らは購入時に比べて35年分高齢化している。その多くは、年金生活に入っているはずだ。修繕積立金が足りなくなって、値上げが管理組合の総会で議案になると、反対票を投じる可能性が高い人々だ。

 

多くの人は35年ローンで新築マンションを購入するときに、そういった35年後のことをほとんど考えていないのではないか。

 

榊 淳司
住宅ジャーナリスト

 

 

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