本連載は、税理士・公認会計士であり、宗教法人からの税務相談に数多く対応している山下勝弘氏の監修書籍、『神社・仏閣……すべての宗教法人のための収益UP&節税対策パーフェクト・マニュアル』(すばる舎リンケージ)の中から一部を抜粋し、宗教法人の収益事業にまつわる課税について解説します。

賽銭もまとまると結構な金額に・・・

当寺は観光地にあります。地元の要望もあって、空き部屋に観光客を泊めるようにしました。布教活動の一環とも考え宿泊料は無料。ただし朝のお勤めと境内の掃除を宿泊条件にしています。

 

さて、問題なのが宿泊のお礼として賽銭箱にお金を入れてくれる人が多いことです。月に30人は泊まるのでけっこうな金額になります。この賽銭も課税対象になるのでしょうか?

宿泊者の自主性によるものなら課税されない

宗教法人が宿泊客を受け入れ料金を受け取る行為は、原則として収益事業とみなされます。ただし、「低廉な宿泊施設」(1泊1000円以下、食事を提供するものについては2食付きで1500円以下)は、収益事業とはなりません。

 

ご質問のケースでは、お勤めなどを課しているうえ、宿泊料も受け取っていないので、賽銭も課税対象にはならないと考えられます。

 

それに、そもそも賽銭箱から宿泊の対価だけを抜き出すことは現実的ではないでしょう。

 

もっともこの賽銭が、宿泊者が自主的に払うものでなく、強制に近いものなら話は別です。宿泊の対価分は賽銭箱から抜き出して集計し、売上げにします。食事代や人件費等はその経費とし、収益事業としての申告が必要になります。そのうえで、このような対価の受け取り方そのものを改めるよう税務署から指導されることでしょう。

 

誤解を避けるためにも、お寺のWEBサイトなどで宿泊予約ができるようにはしないでください。「課税対象にならない」と申しましたが、完全にシロではなく、税務署の側から見るとグレーな部分が残っています。なのに、広く宿泊客を集めるというイメージをもたれてしまうと・・・。

 

痛くもない腹を探られないよう、念には念を入れておいたほうがいいと思われます。

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    本連載は、2016年2月24日刊行の書籍『神社・仏閣……すべての宗教法人のための収益UP&節税対策パーフェクト・マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    神社・仏閣…… すべての宗教法人のための 収益UP&節税対策 パーフェクト・マニュアル

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    山下 勝弘 監修

    すばる舎リンケージ

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