本連載は、税理士・公認会計士であり、宗教法人からの税務相談に数多く対応している山下勝弘氏の監修書籍、『神社・仏閣……すべての宗教法人のための収益UP&節税対策パーフェクト・マニュアル』(すばる舎リンケージ)の中から一部を抜粋し、宗教法人の収益事業にまつわる課税について解説します。

他寺から葬儀等の応援依頼が多くなった昨今だが・・・

後継者不足のせいもあってか、最近、他寺から葬儀や法事の応援依頼を受けることが多くなりました。可能な範囲で当寺の僧侶が応援に行っており、お礼として「お布施」もいただいています。「お布施」の一部は寺に納めてもらいます。

 

こういったケースも、収益事業にある「労働者派遣」に該当するのでしょうか?

収益事業にはならないが、給与の扱いには注意が必要

「労働者派遣」はかつて収益事業に入っていませんでしたが、社会情勢の変化にともない、2007(平成19)年度の税制改正で加えられました。まだ新しい事業ですから判例なども少ないのですが、少なくともご質問のケースは、収益事業に該当する労働者派遣にはならない、と考えます。

 

たしかに貴寺に所属する僧侶を派遣し金銭を受け取っているのですから、労働者派遣と解釈することも可能です。しかし収益事業は次の3つの条件を満たす必要があります。

 

①課税対象事業に該当する

②継続して営まれている

③事業場を設けている

 

ですから、年に数回、近隣のお寺が困ったときに限って応援する程度では、上記3つの条件のうち、②に該当しません。

 

ただし、派遣した僧侶の給与の扱いには注意してください。

 

お布施を支払う側は派遣業者に支払うのではなく、僧侶個人への支出となると「給与支払い」の書類を用意します。そうなると、受け取る側もそのお金を給与として扱うことになり、他の所得との合算で税金が計算されます。

 

その一方、法人対法人の「お布施」という形にすると、宗教活動の一環として課税の対象ではなくなります。今後は、このようなかたちにされるのをお勧めします。

本連載は、2016年2月24日刊行の書籍『神社・仏閣……すべての宗教法人のための収益UP&節税対策パーフェクト・マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

神社・仏閣…… すべての宗教法人のための 収益UP&節税対策 パーフェクト・マニュアル

神社・仏閣…… すべての宗教法人のための 収益UP&節税対策 パーフェクト・マニュアル

山下 勝弘 監修

すばる舎リンケージ

われわれ税理士や会計事務所に寄せられる宗教法人の方々からの質問として多いのは、「支出入の扱いは法人か個人か」「相続について」「土地活用について」この3種類です。 宗教法人は「本来の宗教活動による収益」については…

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