今回は、お寺の住職が節税目的の「賃貸住宅経営」を行う場合の留意点について見ていきます。※本連載は、税理士・公認会計士であり、宗教法人からの税務相談に数多く対応している山下勝弘氏の監修書籍、『神社・仏閣……すべての宗教法人のための収益UP&節税対策パーフェクト・マニュアル』(すばる舎リンケージ)の中から一部を抜粋し、宗教法人の収益事業にまつわる課税について解説します。

所有する建物を数部屋のアパートに改造したいが…

住職です。寺に隣接する土地と建物を個人で所有しています。この建物を数部屋のアパートに改造し賃貸しようと思っています。

 

住職としての給与は減らし賃貸収入で生活するのと、寺が土地を借りてアパート経営をし、家賃は寺の収入にするのと、どちらが節税効果は高いでしょうか。お教えください。

規模にもよるが、賃貸住宅経営は慎重に考えるべき

どれくらいの規模のアパートになるのかわかりませんが、不動産賃貸業の事業的規模として「五棟十室基準」というものがあります。これがひとつの判断ポイントになります。

 

アパートなどの場合は独立した室数が10以上であること、独立家屋の場合は5棟以上貸し付けていれば、事業として営んでいるとされます。すると、不動産所得について「青色申告」を選択すれば青色申告特別控除が受けられます。事業的規模の基準を満たせば控除額は65 万円です。満たさなければ10 万円になります。

 

また、事業的規模であれば、届出によって配偶者や親族に青色事業専従者給与を支払うことができます。

 

賃貸物件が事業的規模であるか否かによって控除額などが変わるのですが、ご質問の文面から推測するに、おそらく基準は満たさない規模と思われます。

 

不動産所得は賃貸料や敷金・礼金、更新料などの総収入金額から、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などの必要経費を差し引いて計算します。これと、給与収入と地代収入とを比較してみれば、有利・不利を判定できます。

 

ただし、お寺が土地を借りて賃貸住宅を建てるとなれば、収益事業の「不動産貸付業」に該当し、お寺は法人税の申告をしなければならなくなります。その可否も考慮して判断してください。

 

また、賃貸住宅経営には空室リスクがともないます。慎重に判断なさってください。

本連載は、2016年2月24日刊行の書籍『神社・仏閣……すべての宗教法人のための収益UP&節税対策パーフェクト・マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

神社・仏閣…… すべての宗教法人のための 収益UP&節税対策 パーフェクト・マニュアル

神社・仏閣…… すべての宗教法人のための 収益UP&節税対策 パーフェクト・マニュアル

山下 勝弘 監修

すばる舎リンケージ

われわれ税理士や会計事務所に寄せられる宗教法人の方々からの質問として多いのは、「支出入の扱いは法人か個人か」「相続について」「土地活用について」この3種類です。 宗教法人は「本来の宗教活動による収益」については…

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