「お前の顔は見たくない。帰れ!」唖然の事態
不用意にカギを渡してしまった場合に、どのようなことが起こり得るのか――実際にあったトラブルの例を紹介しましょう。500坪にもなる巨大な倉庫で、月額の家賃が300万円ほどの物件の例です。長く借りていたテナントとの契約がちょうど終わった直後、タイミングよく「借りたい」という人が現れました。仮にその人をA氏と呼びましょう。
A氏は「陶芸教室を開くことを考えている。倉庫の中に、材料置き場や焼き窯を設けるつもりだ」と話していました。とんとん拍子に話が進み、さあ契約を結ぼう、契約書にはんこを押そうという段階になった時です。突然、A氏が「保証金は分割払いにしてほしい。新規開業の助成金が入る予定なので、間違いなく払うから」と言い出したのです。
これは危ない――と感じ「それではカギを渡せません」と伝えると、A氏は顔を真っ赤にして怒り、「失礼な男だな。お前の顔は見たくない。帰れ!」と罵声を浴びせてきたのです。
結局A氏は、他の不動産会社を通じて、倉庫のオーナーと契約を結びました。
それから半年後の話です。A氏に倉庫を貸したオーナーから私のもとに電話があり、相談したいことがあると告げられました。「いったい何だろう?」と足を運んでみると、オーナーは、「いやー、A氏は保証金も家賃も一銭も払おうとしないんだ。どうしたらいいんだろう」と困り顔を浮かべました。
しかし、私にはもはや何もできることはありませんでした。この例のような最悪の事態に陥らないためにも、カギの取り扱いについては十分な用心が必要です。くれぐれも気を付けてください。
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