相続発生時、遺言や遺書の有効性についてトラブルが発生するケースが多発しています。知識を身につけ、もしもの時に備えましょう。今回は、身寄りのない高齢者の死後、雇用主が遺産を相続したケースについて見ていきましょう。

事例:大阪高等裁判所平成31年2月15日決定

【大阪高等裁判所平成31年2月15日決定】(抗告人が特別縁故者)

 

「(1)被相続人は,幼い頃(4歳)に父と死別してから,母の下でK地区の地域住民の支援を受けて成育した。被相続人は,知的能力が十分ではなかったため,抗告人の父に雇用されたが,昭和53年(47歳)までには,親族(弟,妻,母)と死に別れ,独居生活となった。

 

(2)このような中,抗告人は,昭和47年に抗告人父から家業を引き継いだが,被相続人(42歳)の生活を慮って,平成12年(70歳)までの約28年もの間,家業引継前と同様,被相続人の雇用を続けた。被相続人は,知的能力が十分でなかったが,抗告人は,被相続人が高齢になるまで,同人の稼働能力に見合う以上の給料を支給し続けた。

 

このような被相続人の稼働能力と抗告人による被相続人の雇用の実態に照らすならば,抗告人から被相続人に給料名目で支給された金額には,被相続人の労働に対する対価に止まらず,それを超えた抗告人による好意的な援助の部分が少なからず含まれていたとみることができる。その上,抗告人は,上記期間,被相続人に食事や風呂を提供するなどして,同人の生活も支えてきた。

 

(3)また,被相続人は,平成13年2月(解雇直後)の脳梗塞等の発症後,入院治療を経て施設に入所した。抗告人は,その際の諸手続を行い,その後の見舞い,外出時の付添及び施設への対応を続けたほか,被相続人の財産を管理し,被相続人の自宅の取壊しと跡地の有効利用(賃貸)に奔走した。そして,被相続人が死亡する平成28年●月までの約16年間,上記の財産管理等の状況を精緻に記録し,被相続人に説明した。

 

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