判断について、法律は何も基準を設けていない
上記判断について法律は何も基準を設けていないため、家庭裁判所の裁量でなされるものであり、一般的には
「縁故関係の内容、厚薄、程度、特別縁故者の性別、年齢、職業、教育程度、残存すべき相続財産の種類、数額、状況、所在その他一切の事情」
について、家庭裁判所において調査し、これらの事情を総合考慮して決められることとなります。
どのような要素が重視され、また、どの程度の分与額になるかについては、過去の審判例を参考にして見通しを立てていくこととなります。
元雇用主が相続財産分与の審判を求めた事例
この点の判断において、一つの参考となる最近の事例が大阪高等裁判所平成31年2月15日決定です。この事例は、身寄りがなく、知的能力が十分ではない被相続人の相続財産(約4120万円)について、元雇用主が相続財産分与の審判を求めたという事案です。
この裁判例は、
知的能力が十分でなかった被相続人が4000万円以上もの相続財産を形成・維持することができたのは、約28年間にもわたり、労働の対価を超えて実質的な援助を含んだ給与を支給し続けてきたことや、雇用終了後に被相続人が脳梗塞を発症してから死亡するまでの約15年間緻密な財産管理を継続してきたためである
と認め、相続財産の約半分の分与を元雇用主に認めたものです。
なお、原審の大阪家裁の審判では、雇用終了後の約15年間の財産管理の貢献のみを認め、800万円の分与を決定していましたので、原審と高裁で判断が分かれたという事案になります。
したがって、裁判所が重視すべき事情とそれが結果に及ぼす影響を判断するにあたって、一つの参考となる事例です。
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