成年後見人を選任した「家庭裁判所」にも損害賠償責任
「不正を働く成年後見人を選任したのは誰だ?」財産を横領された成年“被”後見人またはその家族の怒りの矛先が、不正を働いた成年後見人のみならず、その成年後見人を選任した家庭裁判所に向けられることがあります。
実際に、国(家庭裁判所)が成年“被”後見人に対し、国家賠償法に基づく損害賠償責任を負って、賠償金の支払いが命じられた事件もあります。家事審判官による後見監督が、国家賠償法に基づく違法と判断される場合は、下表に示すとおり限定的(注1)ですが、成年後見人を選任する家庭裁判所も責任を負っていることを押さえておきましょう。
(注1)職務行為基準説と違法限定説があります。
【参考】家事裁判官の後見監督に対する国家賠償法上の違法性の判断
(広島高判平成24・2・20判タ1385号141頁〔以下:広島高裁判決〕)
●具体的事情の下において、家事審判官に与えられた権限が逸脱されて著しく合理性を欠くと認められる場合に限られるというべきである。
〔くわしく〕
家事審判官の成年後見人の選任やその後見監督に何らかの不備があったというだけでは足りない。家事審判官が、その選任の際に、成年後見人が被後見人の財産を横領することを認識していたか、又は成年後見人が被後見人の財産を横領することを容易に認識し得たにもかかわらず、その者を成年後見人に選任したとか、成年後見人が横領行為を行っていることを認識していたか、横領行為を行っていることを容易に認識し得たにもかかわらず、更なる被害の発生を防止しなかった場合などに限られるというべきである。
上記は、広島高裁判決が採用した職務行為基準説を示しています。
<ここを確認!>
⇒成年後見人が不正な使い込みをした場合、その成年後見人を選任した家庭裁判所が、国家賠償法に基づく損害賠償責任を問われることがあります。
法改正後も、原則「成年後見人が付いたら退任」
令和元年(2019年)12月4日、会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)(以下、改正会社法)が成立しました。公布日(同年12月11日)から起算して1年6ヵ月以内の政令で定める日から施行されます。以下で、成年“被”後見人に関する改正論点を確認します。
この改正会社法には、取締役等(取締役、監査役、執行役及び清算人)の欠格条項を削除する項目が盛り込まれており、取締役の欠格事由を定めた次の条項は削除されます(図表5)。
実際のところ、この欠格条項が削除されると、社長に成年後見人が付されても、取締役を退任しなくても済むのでしょうか?
実は、取締役の欠格条項が削除されても、委任の終了事由に該当し、取締役退任となると解されています。
会社と取締役との関係は、委任に関する規定に従うことになります。つまり、会社と取締役は、委任関係にあるのです。そのことが、会社法の条文に定められていますので、確認してみましょう(図表6)。ここでいう役員とは、取締役、会計参与及び監査役のことをいいます。会社法上、会社と役員との関係は、民法の委任に関する規定に従うとしています。
原則として、取締役に成年後見人が付されると、委任が終了します。民法では委任の終了事由(以下、終任事由)を図表7のように定めています。
会社法の欠格条項が排除されたとしても、「会社法においても、取締役等が後見開始の審判を受けたことが終任事由となるものと解される」(法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会第13回会議(平成30年6月20日)部会資料22『取締役等の欠格条項の削除に伴う規律の整備についての検討』3頁)ため、社長に成年後見人が付されたことで、終任事由に該当し、取締役退任となれば、代表取締役の地位も失うことになるでしょう。
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