お金を稼ぎながら、喜びややりがいがある
高齢者や障がい者の世話はヘルパーが担当するため、電球が切れたなど困ったことがあっても、たいていのことは入居者と介護事業者との間で解決できるので、家主の管理負担は当初想定していたよりも少なく、自主管理をする上で覚悟していた深夜の呼び出しや、クレームのようなものは年に一度程度だそうだ。建物自体は普通の1Kのアパートだ。
高齢者の住む部屋だけ、断熱材を増やしたり、玄関や部屋の中の転倒の危険がある場所に手すりを取り付けるなど、細かいリフォームを施してもいる。
「『高齢者向きアパート』は高齢者が住むが、同時に、介護や支援で苦労している家族やスタッフたちを助ける意味も持つ。途中で投げ出したくなったこともあったが、首の皮一枚のところで、苦労の多い支援者を助けるアパートをつくりたいという気持ちが強まり、絶対に形にしようと決めた」と鈴木さんは語っている。
今では対象を高齢者だけでなく、障がい者など住宅確保要配慮者にまで拡大。4棟の福祉アパートを運営する。賃貸住宅に住む高齢入居者世帯が増える中で、やりがいと使命感を感じているという。
自身の夢を実現したり、入居者との交流を楽しんだり、社会貢献にやりがいを感じたり、地域活性化に面白さを見出したり、サラリーマン生活ではなかなか実現できないライフスタイルを楽しんでいる人たちがいる。
自身の知恵や工夫次第で、お金を稼ぎながら、お金では買えない喜びややりがいを感じられる経験ができるのも、家主業の醍醐味といえそうだ。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
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