新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、業績悪化や倒産の危機に直面している企業が増えています。取引先の企業がそのような状況に直面している場合には、取引先の資金繰りや支払能力からみて、取引先に対する債権の回収が困難になるケースが増えてくるでしょう。この点、法人が保有する債権に関する貸倒損失の計上については、いくつかのルールがあり、そのルールを満たさない場合には貸倒損失の損金算入が認められないこともあるため、慎重な検討が必要となります。今回は、法人が保有する債権が貸倒れたり、放棄されたりした場合の税務上の取り扱いを紹介します。

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貸倒れ以外の「債権放棄」

基本通達9-4-1(4)の貸倒損失の要件である債権放棄について、税務上の貸倒損失に該当しないと判断された場合には、その債権放棄は取引先に対する経済的な利益の供与として、原則として法人税法37条に定める寄附金として取り扱われます。寄附金として扱われる場合には、債権放棄額のうち、寄附金の損金算入限度額として計算される一定の金額までしか、損金に算入することができません。

 

具体的には、債権放棄は一般寄附金というものに該当し、以下の算式によって損金算入限度額を求めます。

 

一見すると難しい計算式となっていますが、要するに利益が多く計上されていたり、資本金の額が多額である会社の場合には、損金に算入できる寄附金の額が大きくなります。

 

「寄附金として取り扱われない」債権放棄

税務上の貸倒損失として認められなかった債権放棄であったとしても、寄附金としては取り扱われず、その全額を損金に算入できるケースがあります。

 

(1)子会社等を整理、再建する場合の債権放棄等(法人税基本通達9-4-1、9-4-2)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

(子会社等を整理する場合の損失負担等)

9-4-1 法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下9-4-1において「損失負担等」という。)をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ず(必要性)その損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)

 

(注) 子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる(以下9-4-2において同じ。)。

 

(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)

9-4-2 法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9-4-2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもの(必要性)で合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)

 

(注) 合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。

 

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