「医師の働き方改革」30人からフィードバックをした結果…

一般企業では既に始まっている時間外労働の上限規制が、2024年4月から医師にも適用される。勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」とされているが、その実現は困難ではないかと指摘されている。その「医師の働き方改革」を実現した医師がいる。「現場のニーズに応え、仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」という。わずか2年半で、どのように医師の5時帰宅を可能にしたのか――、その舞台裏を明らかにする。

医師の方はこちら
無料メルマガ登録はこちら

「働き方改革」の基本となる考え方とは

「医師の働き方改革」を手掛けたことで赴任後、2年半程で医局員が定時の5時には帰宅できるようになるという、着任時には予想もできない職場環境が実現しました(第11回参照)

 

本連載タイトルである「仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」は、静岡病院で推進してきことを端的に表したフレーズです。

 

「部下がどの様なことで困っているかについてヒアリングしてきてください」等というコーチングで出された宿題を何度もこなすうちに、いつの間にか現場のニーズが見えるようになってきたのです(第4回参照)

 

「現場のニーズに応え、仕事の流れを変える」ことが医師の働き方改革につながったという。(※写真はイメージです/PIXTA)
「現場のニーズに応え、仕事の流れを変える」ことが医師の働き方改革につながったという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

その「現場のニーズに応えて仕事の流れを変える」べく、病院内外の様々な方々に働きかけ、協力を得られるようになるにつれて、年間1000時間以上の残業を抱えていたであろう医局員たちも定時に帰宅できるようになったのです。

 

「まずは現状と理想のギャップを明らかにして、その差分を埋め合わせていく」ことを、コーチングでは「コーチングフロー」や「GROWモデル」と呼びます。今振り返ると、私は2年半かけて、医局員等へのヒアリングやフィードバックで得られた課題や要望と、現実のギャップを埋めることにただひたすら取り組んできた気がします。

 

ここからは総論として、「医師の働き方改革」を進めるにあたって、私が行ってきた「現場のニーズに応え、仕事の流れを変える」ことについての工夫や考え方について6回に分けてお伝えしていきたいと思います。

フィードバックで優先順位、課題が明らかに

赴任直後から1年半、コーチングを本格的に学んでいたことは、すでにお話しをしました。1年半のコースと並行し、プロフェッショナル・コーチ(プロコーチ)にも半年間ほど1on1コーチングをうけ、医局内の組織開発についてより具体的に自分の考えをまとめるように努めました。

 

そこで、最初に出された宿題が「現場の医療関係者30人から、まずは糖尿病内科の現状についてフィードバックをもらってきてください」でした。ちなみに、フィードバックとは、対象者が目的に向かって取り組んでいる状況をみて、他者が指摘や評価、アドバイスすることをいいます。

 

一口に30人といいますが、これはかなりの数です。「30人」と聞いて当初は正直、大変面食らいました。しかし、「ここまできたら、やるしかない」と腹を括り、医局員3人を始め、病棟看護師長、外来看護主任、栄養科長、病棟薬剤師、内科医局長、内科秘書、病院長、診療部長、医事課、地域連携室などといった、院内のステークホルダーはもちろん、静岡県東部エリアで開業されている糖尿病専門医の先生方などあらゆる方面の医療従事者に、我々の診療科について忌憚のないご意見やフィードバックを尋ねて回りました。

Basical Health産業医事務所 代表
日本糖尿病学会専門医・研修指導医、日本肥満学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医などの資格をもつ内科医・産業医。

1998年順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学 代謝内分泌学 助教などを経て、2012年41歳の若さで順天堂大学附属静岡病院 糖尿病・内分泌内科 科長(兼 准教授)に就任。同院で、「地方病院の医局員たちの残業の多さを何とか改善できないか」と考え、「医師の働き方改革」に着手。コーチングの手法を活用し、現場の要望を聴き出し、それを反映させた組織開発を独自で行う。3年目には医局員全員が定時に帰宅できる体制を作りあげる。その後、日本IBM株式会社で専属産業医を2年弱務めた後、2018年に独立。現在、健康保険組合やその関連企業での健康増進・予防医療などのコンサルタント業務を行いながら、糖尿病の外来診療、嘱託産業医としても活動する。今年度より、厚生労働省医政局委託事業「医療従事者勤務環境改善のための助言及び調査業務」委員会の委員に就任するなど、日本中の医師が安定的に働き続けられる環境作りに取り掛かっている。趣味は音楽。高校3年生時には、全日本吹奏楽コンクール(普門館)にて金賞受賞。担当楽器はチューバ。

著者紹介

連載「医師の働き方改革」仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

佐藤 文彦

中央経済社

すべての病院で、「医師の働き方改革」は可能だという。 著者の医師は「医師の働き方改革」を「コーチング」というコミュニケーションの手法を用いながら、部下の医師と一緒に何度もディスカッションを行い、いろいろな施策を…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧