それまでは、糖尿病内科に関係のない低血糖トラブルでも、問題が発生すると我々糖尿病医が病棟に呼ばれ、その対応に追われることがありました。そういった対応には、ある程度時間がかかる場合も少なくありません。そもそも低血糖トラブルが起こらなくなれば、そういった対応に追われることもなくなります。
その結果、時間的にも精神的にも非常に落ち着いて仕事ができるようになっていったのは事実です。
フィードバックで現実に合わない無駄な施策を省け
実際のところ、スライディングスケールの見直しは、多くの病棟の看護師が改善を望んでいました。このことも病院内でヒアリングを行ってみて、改めて分かったことでした。こういった多くの医療関係者からのフィードバックによって、問題の重要度が明確化され、それを踏まえて改善策を立てたため、みんなが非常に協力的に対応してくれたのです。
このようにフィードバックを積極的にもらいに行くことで、問題点や目指す方向性が明確になっていきました。そうすることで、いわゆる「机上の空論」といったような、現実にそぐわずに企画倒れになりそうな実の無い策を上層部から押し付けられるのではなく、「現場にニーズに応えた」施策を的確に打つことができるのです。
そして、「現場にニーズに応えた」施策を打つことを心掛けていくことによって、的外れな行動を起こすことが回避できました。大事なところを押さえていけた結果として、2年半という期間で成果を出すことが可能になったのだと思います。
私自身、当初から現場の話を聴くことが有効だときちんと認識していたわけではありません。プロコーチにコーチされ、「30人からフィードバックを」という課題に取り組み始めたことがきっかけとなり、それこそ片っ端から様々な医療者とコミュニケーションを取らざるを得ない状況に追い込まれたのです。
それが、後に予想以上の成果として表れていきました。
●トップの明確な指示が、「医師の働き方改革」をスムーズに進める
●フィードバックの活用で、<現実にそぐわない無駄な>施策を省け
佐藤文彦
Basical Health産業医事務所 代表