研修医の力も活用!研修医に選ばれるための診療科を目指した

一般企業では既に始まっている時間外労働の上限規制が、2024年4月から医師にも適用される。勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」とされているが、その実現は困難ではないかと指摘されている。その「医師の働き方改革」を実現した医師がいる。「現場のニーズに応え、仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」という。わずか2年半で、どのように医師の5時帰宅を可能にしたのか――、その舞台裏を明らかにする。

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初期研修医たちに選ばれる糖尿病のレクチャー作成

私の着任時は、静岡病院の初期研修医のローテーションの仕組み上、糖尿病内科の選択がしにくい状況にありました。

 

そもそも静岡病院は、ドクターヘリの出動件数が年間で1339件(2018年度)と非常に多いわけですから(第1回参照)、「ドクターヘリに乗りたい」とか、「第3次救急を経験したい」といった救急医療へのモチベーションが高い研修医が集まってきます。

 

救急医療で後方支援を担う糖尿病内科を希望する研修医自体が少ないのが実状だったのです。このため、研修医のラウンド人数は、年間で数名程度がやっとでした。

 

救急医療で後方支援を担う糖尿病内科を希望する研修医自体が少ないのが実状だったという。(※写真はイメージです/PIXTA)
救急医療で後方支援を担う糖尿病内科を希望する研修医自体が少ないのが実状だったという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

そこで、医局員全員で初期研修医たちに当科をローテーション先として選んでもらえるように、必死で知恵を絞りました。研修医が選んでくれれば、医師数が増える訳ですから、当然ながら「医師の働き方改革」が促進されます。

 

研修医獲得拡大に向けて医局員達から出たアイデアが、「『将来、役に立ちそうだから、是非研修しておきたい』と思わせるような糖尿病内科のローテーションプログラムを作る」ことでした。

 

救急医療に関心が高い研修医は、その後、救急科や脳神経外科・循環器内科といった救急医療に直結する診療科に入局する傾向にあります。ただ、こういった診療科に入局した場合でも、生活習慣病をもつ患者さんが運ばれて来た時には、必ず血糖コントロールを行うことも治療と同時に求められます。

 

このため、こういった救急性の要素が高い診療科への入局を希望する研修医の心をくすぐるような、

 

(1)血糖値が高い人が運ばれた際の初期段階での血糖管理の仕方
(2)その後、糖尿病内科とどの様に連携を取っていくべきか

 

などをイメージできるような、糖尿病についてのレクチャーをローテーション中に随所に組み入れることにしました。ある意味、糖尿病内科に入局して来ないことを前提とした糖尿病のレクチャーとなります。

 

このレクチャーの詳しい内容についても医局員たちからアイデアを出してもらって、それを積極的に組み入れていきました。もちろん、最終的な責任は科長である私にあります。ですから、ここでも医局員たちが考えてくれた取り組みに対して、上司の覚悟と責任を持てるのかがポイントになると、自分に言い聞かせていました。

 

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Basical Health産業医事務所 代表
日本糖尿病学会専門医・研修指導医、日本肥満学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医などの資格をもつ内科医・産業医。

1998年順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学 代謝内分泌学 助教などを経て、2012年41歳の若さで順天堂大学附属静岡病院 糖尿病・内分泌内科 科長(兼 准教授)に就任。同院で、「地方病院の医局員たちの残業の多さを何とか改善できないか」と考え、「医師の働き方改革」に着手。コーチングの手法を活用し、現場の要望を聴き出し、それを反映させた組織開発を独自で行う。3年目には医局員全員が定時に帰宅できる体制を作りあげる。その後、日本IBM株式会社で専属産業医を2年弱務めた後、2018年に独立。現在、健康保険組合やその関連企業での健康増進・予防医療などのコンサルタント業務を行いながら、糖尿病の外来診療、嘱託産業医としても活動する。今年度より、厚生労働省医政局委託事業「医療従事者勤務環境改善のための助言及び調査業務」委員会の委員に就任するなど、日本中の医師が安定的に働き続けられる環境作りに取り掛かっている。趣味は音楽。高校3年生時には、全日本吹奏楽コンクール(普門館)にて金賞受賞。担当楽器はチューバ。

著者紹介

連載「医師の働き方改革」仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

佐藤 文彦

中央経済社

すべての病院で、「医師の働き方改革」は可能だという。 著者の医師は「医師の働き方改革」を「コーチング」というコミュニケーションの手法を用いながら、部下の医師と一緒に何度もディスカッションを行い、いろいろな施策を…

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