安価だが「サービスが悪い」特養の没落だったが
「介護付き有料老人ホーム」は有料老人ホームの主役か
多くの方は、老人ホームというと「特養」か「介護付き有料老人ホーム」のことを無意識に頭に浮かべます。それは、長い間、老人ホームと言えば特養が主役であり、2000年以降、介護付き有料老人ホームが急増したことによります。
ここでは、介護付き有料老人ホームについて少し論じていきたいと思います。
介護付き有料老人ホームは、2000年以降急速に発展しました。介護付き有料老人ホームと特養は、パンに対するバターとマーガリンの関係に似ていると考えています。バターは特養、マーガリンは介護付き有料老人ホームです。
そもそも、トーストにはバターが主役でした。私が子供のころは、パンにはバターを塗っていたことを思い出します。よく、パンにバターを塗りたくっている私を見るに見かねて、母親から「あなたはペンキ屋さんですか?」と皮肉を言われたものです。そのうち、バターは高カロリーだとか、動物性の脂肪は身体に悪いとかの理由で、パンにはマーガリンがよいという話になり、わが家の食卓でもバターは冷蔵庫の片隅に追いやられ、マーガリンが鎮座していたと記憶しています。
ところが最近では、マーガリンは身体によくないということになり、トーストにはバターということになっているようです。わが家の冷蔵庫にもマーガリンはありません。
老人ホーム業界でも、バターである特養は、しばらくの間、施設介護の中心的な役割を担ってきました。しかし、2000年に介護保険制度が始まり、多くの民間企業が特養のまがいものであるマーガリンの介護付き有料老人ホームの運営に参加してから、特養の立場は一転してしまいました。
「サービスが悪い」とか、公的な機関(社会福祉法人)が運営しているので「気が利かない」とか、「痒いところに手が届かない」などと酷評され、民間がやっている介護付き有料老人ホームのほうが質が高いという評価を受けるようになりました。