今後、日本企業が若手人材を安定的かつ十分に確保するのは困難な状況が続きます。そんななか人材難を解消できる現実的な選択肢こそ「シニア雇用」。日本政府の動向に着目し、そのワケを解説します。※本連載は、石黒太郎氏の著書『失敗しない定年延長』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

人手不足解消の現実的な選択肢は「シニア雇用」

前回の記事『外国人も「日本は選ばない」…八方塞がりな労働力不足の実態』(関連記事参照)でお伝えしたように、少子化による慢性的な人材不足を女性・外国人によってカバーすることは難しく、技術革新がどこまでヒトの職務を代替するかも未知数です。そうなると、いよいよシニアの雇用が、人材不足の解決策として重要になってくる訳です。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ある意味、人手不足解消の選択肢として、シニアの継続雇用は最も筋が良い方法です。なぜなら、自社での就労経験豊かな人材が既に目の前に存在しており、シニア本人の実力を会社が十分に把握しており、雇用期間を延ばすことで容易に確保が可能だからです。人材を一から探したり、候補者を見極めたりするような手間はほとんどかかりません。

日本政府が推進する「シニア雇用」の実態

また、日本政府もシニア雇用を重視し、国策として推し進めようとしています(主な理由は年金財政健全化の観点かもしれませんが)。

 

2018年2月に閣議決定された「高齢社会対策大綱」では、以下の基本的な考え方に則り、高齢社会対策を進めることが宣言されました。

 

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①年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会を目指す

②地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作る

③技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向する

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さらに、2019年6月に開催された未来投資会議では、全世代型社会保障への改革が内閣にとって最大のチャレンジであることが確認され、次の方向性が示されました。

 

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①65歳以上への継続雇用年齢の引上げについては、70歳までの就業機会の確保を図り、高齢者の希望・特性に応じて、多様な選択肢を整える

 

②中途採用・経験者採用拡大及び新卒一括採用見直しを進め、併せて、企業による評価・報酬制度の見直しを図る。加えて、政府としては、大企業に対し、中途採用・経験者採用比率の情報公開を求めるといった対応を図る

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そして、法制度として整える選択肢として、以下の内容が謳われました。

 

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①定年廃止

②70歳までの定年延長

③継続雇用制度導入(現行65歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む)

④他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現

⑤個人とのフリーランス契約への資金提供

⑥個人の起業支援

⑦個人の社会貢献活動参加への資金提供

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これらの動きを受け、70歳までの就業確保に努めることを企業に求め、従業員301人以上の企業には、社員採用数に占めるキャリア採用の比率公表を義務付けるといった内容を含む雇用改革関連法の改正が2020年3月31日に参議院本会議で可決され、2021年4月からの施行が決定しました。

今後、求められる「年齢に関係なく働ける職場」づくり

こういった日本政府による検討動向の中で私が注目しているのは、「エイジレス」という表現が打ち出されることが多くなってきたことです。エイジレス、すなわち、年齢に関係なく働き続けられる雇用環境の実現が、今後、国策として企業に求められるようになるでしょう。

 

1980年代に努力規定から始まった55歳から60歳への定年延長の動きは、その後、法的に義務化されました。これからの65歳ないしは70歳への定年延長も同じような流れになるとも考えられます。

 

仮に読者の皆さんの会社が、現時点で人手不足に直面していなくとも、法律によって定年延長が経営課題の一つになってくるという訳です。

 

好むと好まざるとに関わらず、遅かれ早かれ、日本企業は定年延長について検討する必要があり、社内でその音頭を取る人事部門の責任は極めて重大です。

 

 

石黒 太郎

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部 組織人事戦略部長・プリンシパル

 

 

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失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために

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石黒 太郎

光文社

シニア活用こそが、人材不足解消の最後の砦。 「定年延長」に失敗すれば、日本経済は必ず崩壊する…。 少子化の進展により、日本の生産年齢人口は急激に減少中。さらに、バブル期入社組の大量定年退職が秒読みに入ったこ…

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