どこまで「人間の職務」を代替できるかは未知数
現時点でのAIは、「特定型AI」の範疇に止まっており、何らかの特定の分野においてのみ、その能力を発揮するように開発されています。囲碁において世界トッププロの棋士を破ったことで有名なAlphaGoは特定型AIの典型です。また、将棋好きの方なら、2017年に佐藤天彦叡王に勝利したPonanzaを思い起こすでしょう。
これら特定型AIはその用途が限定的であり、ヒトが担う特定の職務に向けたAIが開発されない限り、その影響は軽微です。実際、AlphaGoやPonanzaによって職を奪われた人は今のところほとんどいないことでしょう。
しかしながら、特定型ではない「汎用型AI」が誕生すると、状況は一変するとの予想があります。汎用型AIは人間と同等以上の汎用化能力を有しており、情報入力と自己学習によって、様々なタスクを幅広く自律的にこなすようになれるとされています。そのため、「汎用型AIが登場するであろう2030年頃には、現在のホワイトカラー職務の多くが代替される可能性がある」という調査結果もあります。
ただし、AIを中心とする技術革新が、ヒトの担う職務をどの程度代替していくかを判断するのは、時期尚早です。図表にある通り、様々な研究結果が発表されているものの、共通認識はまだ定まっていません。とはいえ、定年延長を含む人材マネジメントに大きな影響を与える動きであり、人事に携わる者としては注視を続ける必要があるでしょう。
石黒 太郎
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部 組織人事戦略部長・プリンシパル
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