「マイナスだからダメ」というわけではない投資C/F
<b. 投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動によるキャッシュ・フロー(以下、投資C/F)は、企業の投資活動によって流入・流出した現金の動きが記載されます。
投資C/Fは、投資を行って現金を支払ったのであればマイナスになり、設備や株を売却して現金を受け取ったのであればプラスになります。
この投資C/Fは、「マイナスだからダメ」ということはありません。投資C/Fで見るべきポイントは、営業活動や財務活動によって流入した現金を投資して、「事業拡大を目指した動き」を取れているか、という点です。
投資を行わない企業は現状維持のままで終わってしまいます。そのため、企業は基本的に投資をする必要があります。逆に言えば、投資C/Fが大幅にプラスである会社は、事業を縮小しようとしていると捉えることができる場合もあります。
投資C/Fを読み解くことで、企業の投資方針などの経営スタンスを推測することができます。
「事業拡大を目指した動き」を読み取るポイントは?
投資C/Fの中で特に着目すべきポイントは、
●投資の財源はどこから来ているのか?
●投資先はどこなのか?
●投資する市場は、どのステージでどの程度の投資を行っているのか?
などです。
たとえば、店舗を持つ企業の場合、「営業活動で得た資金を成熟市場の設備投資に回す」などです。
企業の例をあげると、ソフトバンクは「財務活動によって得た現金で成長市場のベンチャー企業に投資している」一方、サイバーエージェントは「営業活動で得た現金を成長市場に位置する新規事業に投資している」のです。
どちらも成長市場に資金を投資していることには変わりありませんが、ソフトバンクは財務活動から、サイバーエージェントは営業活動から資金を得ているという点で両者は異なります。
資金調達の増減を反映…財務C/Fは非常にシンプル
<c. 財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動によるキャッシュ・フロー(以下、財務C/F)は非常にシンプルで、企業が株式や借入金を通して資金調達を行う際の、調達と返済の状況が記載されます。
財務C/Fは、資金調達をして現金預金が増えたらプラス、減ったらマイナスです。企業が上場した場合、そのタイミングでの財務C/Fは非常に大きくなることが多いです。なぜなら、上場のタイミングで一般投資家から何十億、何百億と資金を調達することができるからです。
ちなみに、上場する会社の情報は東証の新規上場会社情報で見ることができます。過去に上場した会社の1年後の有価証券報告書から、上場期の財務C/Fを見てみると、大きくなっていることが確認できると思うので、興味のある方はぜひ見てみてください。
<キャッシュ・フロー計算書のまとめ>
●C/Sは現金預金の動きを見ることができる表である。
●動きは、営業活動、投資活動、財務活動に分けて把握する。
●営業C/Fは、本業の事業によってどれくらいの現金預金が動いたかを示す。
●投資C/Fは、固定資産や株式などの投資によってどれくらいの現金預金が動いたかを示す。
●財務C/Fは、借入や投資などの資金調達によってどれくらいの現金預金が動いたかを示す。
●C/Sは、黒字倒産に陥らないために重要な、現金預金の動きをしっかりと把握できる。
(※本記事に掲載の情報は特段の注や付記がある場合を除き、2019年12月書籍執筆時点での各社決算書情報を参照しています。)
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