通常、「P/Lが赤字」なら「C/Sも赤字」だが…
C/S自体は少々理解しづらい部分もありますが、今回の問題はさほど難しくありません。ここで取り上げる企業は、2019年の同時期に上場した2社、「Sansan」と「スペースマーケット」です。
【今回の登場企業】
●Sansan
企業向けのSansan、個人向けのEightという名刺管理ツールを提供。
●スペースマーケット
あらゆるスペースを時間単位で貸し借りできるプラットフォームを運営。
この2社は上場してまもなくの決算書で、P/L上だと赤字です。P/L上では両社ともに赤字になっているのに、どちらか1社だけ、C/S上では営業キャッシュ・フローが黒字になっています。
では、見ていきましょう!
Q. Sansanのキャッシュ・フロー計算書はどちらでしょう?(図表1)
<2社のC/Sの違いを考える>
学生くん:
――「この2つのC/Sを見比べると、確かに営業C/Fのところだけ①はプラスで、②はマイナスになってますね。」
営業さん:
――「どっちもP/L上では赤字なのに、1社は営業C/Fが黒字で、1社は赤字なんですね…? どういうことなんでしょうか。」
投資家さん:
――「P/Lが赤字ならC/Sは赤字になっているはずと考えるのが普通なんだけどなぁ。そもそもこの2社がどういうビジネスでお金を稼いでいるかってとこを把握しておきたいんだけど…。」
「お金が入ってくるタイミング」に着目
<2社のビジネスモデルを考える>
銀行員さん:
――「Sansanは主に企業向けの名刺管理サービスを提供していてBtoBビジネスですよね。」
学生くん:
――「それで言うと、スペースマーケットは場所を貸したい人と借りたい人をマッチングするサービスなので、BtoCビジネスになりますかね。」
投資家さん:
――「スペースマーケットって、プラットフォームを提供してユーザーが1回使ったらその都度手数料をもらう感じだよね? ショットでの入金があるっていうか。Sansanはどうなんだろう?」
銀行員さん:
――「Sansanもサブスクリプションなら、登録ユーザーの数に応じて、毎月お金が入ってくる仕組みってことですね。」
営業さん:
――「あれ? いえ、Sansanはうちの会社でも導入してますが、年間契約でその年1年分の使用料を前払いしているみたいですよ。」
銀行員さん:
――「そうなんですか。言われてみれば確かに企業向けですし、手間を省くためにも毎月契約更新はしないですよね。ということは、Sansanはライセンス数×1年分の利用額がまとめて入ってくる…ということでしょうか。」
投資家さん:
――「なるほど、サービスの利用に応じてお金が入ってくるのは同じだけど、利用の都度お金が入るか、年間契約かの違いがありそうだね。前受けで入金があるってことは、まだ利益になっていないけど、お金の流れとしては先に現金が来るもんな。これは①がSansanだね。」
大手町さん:
――「正解。①がSansanだよ!」