医学生や若い医療者の発言を聴いていて感じることは、「コーチングやコミュニケーションスキルといったものは、“病院経営者”や“管理職レベル”の医師であれば、マネージメントの一環として部下の心を掌握するために当然“学んでいる”し、普段から“上手に使いこなしている”ものだ」と信じて疑っていないことです。
おそらく、若い世代の人たちは子どもの頃から何かしらの「コミュニケーションスキル」を学び、触れる機会が多かったのではないでしょうか。
管理職に必要なコミュニケーションスキル
一方で、昭和の時代に育った我々40歳代後半以降の世代の医療者にとって、そのようなスキルを学んだり、習得する機会はほぼ皆無でした。こういった“コミュニケーションへの関心度合い”の「すれ違い」が、現在、世代間ギャップとして浮き彫りにされ、医療機関での雇用問題になっています。
確かに、一般企業であれば、管理職以上のポジションに着くと、コーチングやチームビルディングなどのコミュニケーションスキルを学ぶ研修が毎年のように行われているようです。コミュニケーションスキルを備えていない上司は、あっという間に若い人たちからそっぽを向かれ、あっさり部下が退職していったり、時には「パワハラ」と訴えてくることさえあるかもしれません。企業はそれを危惧して研修を実施しているのでしょう。
こういった状況を鑑みて、厚生労働省も「医道審議会医師分科会医師臨床研修部会 報告書<医師臨床研修制度の見直しについて(2020年度研修より適用予定)>」の「医師の臨床研修に係る指導医講習会の開催指針について」指導医講習会のさらなる質の向上を図るために、「指導医が身につけるべき指導方法及び内容の例」として、「コーチング」や「フィードバック技法」といったコミュニケーションスキルについて明記されています。
「すでに指導医は普段の院内業務の中で『コーチング』といったコミュニケーションスキルを使いこなしていないといけない立場に立たされており、ましてや『コーチング』なんて知らないとは決してえない状況になってしまっている」ということを、しっかり自覚しておく必要があります。