慶應義塾大学と東京歯科大学の合併に向けて協議を始めた。多くの人はこの合併報道に驚いたが、現役の医師は「慶應義塾大学と東京歯科大学とのこれまでの関係を知っている医療関係者は、いよいよ合併するのかと、ある程度予期していたのではないだろうか」と感想を漏らす。こうした大学の連携・統合の動きは他大学に波及し、大学の生き残り策が模索されていく可能性がある。今回の慶應義塾大と東京歯科大学の統合を現役の医師はどう見たのか。現在、連載中の「『医師の働き方改革』仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」の著者の佐藤文彦氏が緊急レポートする。

東京歯科大市川総合病院を手に入れる慶應病院

11月6日、東京歯科大学が慶應義塾に歯学部の統合と法人の合併を申し入れ、慶應義塾は11月26日の評議員会で合併協議の開始を決めたとの報道がされた。東京歯科大学の創設者は、慶應義塾に入塾後に、現在の東京歯科大学を開校したことなど、歴史的に関係が深いことも紹介されていた。

 

一般の方々は驚かれた方も多かったと思うが、慶應義塾大学と東京歯科大学とのこれまでの関係を知っている医療関係者は、いよいよ合併するのかと、ある程度予期していたのではないだろうか。

 

その理由は、歴史的な関係の深さもあるが、東京歯科大学市川総合病院などは、実質的に以前からすでに内科系などの診療科長は慶應義塾大学関係者が多くを担ってきていた実績があった。もちろん、詳細な経緯や理由は外部の人間には分からないが、今年の新型コロナウイルス感染症による病院運営の困難さなどが、合併への最後の決断を後押ししたのかもしれない。

 

東京歯科大学市川総合病院は、内科系などの診療科長は慶應義塾大学関係者が多くを担ってきていたという。(※写真はイメージです/PIXTA)
東京歯科大学市川総合病院は、内科系などの診療科長は慶應義塾大学関係者が多くを担ってきていたという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかも、市川市内は地図を見れば分かるように、お茶の水界隈ほどではもちろんないが、北から国際医療福祉大学市川病院、国立国際医療研究センター国府台病院、東京歯科大学市川総合病院と縦に並んでおり、さらに南には公益社団法人地域医療振興協会東京ベイ・浦安市川医療センターと、他の3病院はいずれも巨大医療機関が譲渡等による経緯を経て、近年、新しく生まれ変わった病院として次々と誕生し、病院銀座と化してきている。

 

こういったブランド力の強い病院がひしめき合い始めた中で、東京歯科大学と慶應義塾大学も東京歯科大学市川総合病院を慶應義塾大学附属病院に移行する必要性を強く感じていたのかもしれない。

 

また、東京歯科大学の拠点である千葉県には、慶應義塾関連の学校や病院はなく、今まで関係が希薄だった。そういった意味では、今回、慶應義塾大学歯学部が稲毛に誕生し、慶應義塾大学附属市川病院ができたりするとなると、千葉県民にとって慶應義塾大学がかなり身近な存在になり、今まで以上に好感度が上がるのは間違いないだろう。そうなると慶應義塾大学を目指す若者が増えたり、後々千葉県内にも慶應義塾系列の中学校・高校が誕生するといった機運も高まっていくことになるかもしれない。

 

医学部の観点で考えると、順天堂大学などがこれまでに大学の附属病院を増やし、研修医を大勢集めることで、上手に医師の囲い込みに成功していることもあるため、慶應義塾大学直系の附属病院が増えることは、これと同様の効果が見込まれる。それにより、医師不足の問題を解消する有効な手段となるであろう。そして、慶應ブランドとなれば、看護師などのコメディカルスタッフも集めやすくなることも容易に想像できる。

 

さらに、慶應義塾大学附属病院に変われば、分院でも診療科長が教授というポジションを名乗れるようになるかもしれない。そういった意味では、優秀な人材を集めたり保持することにも有効であるといえる。これは各医師にとっても切実な問題であるため、この効果は絶大かもしれない。

 

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地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

地方の病院は「医師の働き方改革」で勝ち抜ける

佐藤 文彦

中央経済社

すべての病院で、「医師の働き方改革」は可能だという。 著者の医師は「医師の働き方改革」を「コーチング」というコミュニケーションの手法を用いながら、部下の医師と一緒に何度もディスカッションを行い、いろいろな施策を…

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