「大卒」が当たり前の時代…中卒から高卒へシフトの過去に学ぶ

少子化の進展により、労働力不足の問題が深刻化の一途を辿っています。今後日本企業が生き残っていくには、経験豊かなシニア人材をいかに活用できるかが勝負です。日本企業が直面している危機を認識するため、まずは総人口の推移に着目し、今後起きうる変化を解説します。※本連載は、石黒太郎氏の著書『失敗しない定年延長』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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大卒人材が急増…「学歴重視の人事」は時代錯誤

前回の記事『定年延長で潰れる企業…「不景気だから新卒採用しない」の末路』では、シニア雇用が企業経営に大きな悪影響を与えかねない状況にあることを紹介しました(関連記事参照)。ただし、年齢別人員構成がそこまで高齢化していない企業にとっては、それほど重要な課題ではないと見る向きがあるかもしれません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

本当にそう考えてしまっていいのか、ここでは日本における労働市場全体の見通しについて確認しておきましょう。平成時代の約30年間で生産年齢人口がどう推移し、令和時代にはどのような変化が見込まれているのか、正しい時代認識を持っておくことが、自社における今後のシニア雇用のあり方を見定める助けになります。

 

図表1は、日本の18歳人口と進路の推移を示したグラフです。グラフの横軸は西暦年であり、左端の60が1960年、右端の30が2030年を意味します(2018年以降は予測値)。縦軸は18歳人口を万人で示しており、棒グラフの白い帯の上端が各年の18歳人口の総数、上から2つ目のグレーの帯の上端が高校等卒業者数です。そして3つ目以降の帯は進路別の人数を表しています。

 

出所:文部科学省『高等教育の将来構想に関する参考資料』(2018)に基づき、筆者作成
[図表1]日本の18歳人口と進路の推移 出所:文部科学省『高等教育の将来構想に関する参考資料』(2018)に基づき、筆者作成

 

早速内容を確認していきますと、平成時代の18歳人口のピークは、平成4年の1992年で、この年がいわゆる第二次ベビーブーム世代のど真ん中です。1992年には18歳が205万人もいました。そのうち、大学入学者は54万人であり、概ね4人に1人が大学に進学していたことになります。この頃の大学は、現在と比べると狭き門でした。

 

これが平成29年の2017年になりますと、18歳人口が120万人にまで減少しています。1992年から四半世紀の25年間で6割以下になってしまったということです。また、18歳人口がこれだけ減少している一方で、大学入学者が63万人いることも注目に値します。実に、2人に1人以上が大学に進学していることになります。この大学入学者数の増加は、平成の30年の間に大学そのものの数が増え、高卒就職者数が著しく減少したことが大きな要因です。

 

少し話を脱線させてください。平成時代の高卒就職者数の減少と同じような現象が、実は過去にも生じています。それは1960年代後半から70年代にかけて起きた、中卒就職者数の減少です。1960年代までの日本企業は、中卒人材を現場作業員として、高卒人材を事務員として採用することが一般的でした。しかしながら、高度経済成長に伴う高校進学率の上昇により、企業が中卒人材を十分に確保することが困難になってしまいました。そのため、各企業は現場作業員の採用ターゲットを中卒人材から高卒人材へと移したのです。当時は「せっかく高校を卒業したのに、事務の仕事に就けなかった」とショックに思う若者が続出したそうです。

 

このように新卒人材の供給源は、1970年前後に中卒から高卒へとシフトしました。それが数十年の時を経て、高卒から大卒へと再シフトしたのです。高校を卒業して就職する人の数が激減し、大学進学率が上昇したことにより、一部の上位校を除く大学の相対的価値は、昔の高校と同じ程度になったと言ってもよいでしょう。

 

恐らく、今後は大学卒業者を現場作業員として採用することが当たり前になる、と私は考えています。実際、期間従業員として大卒者がメーカーの生産現場で働いていることも珍しくなく、既にそういった時代が始まっていると言えるかもしれません。その場合、高卒や大卒といった学歴区分によって人事処遇のコースや昇格モデルなどを分けている企業は、人事制度を根本から見直す必要があります。

 

話を元に戻しましょう。図表1のグラフは18歳人口を表していますので、2030年代後半までの人口減少がほぼ確定しています。既に日本人としてこの世に生を享けているからです。残念ながら、各年の18歳人口は100万人を割り込むようになります。厚生労働省実施の人口動態統計によると、2019年の出生数は90万人を切っており、当初の想定以上に少子化が進展していると考えられます。

あと数十年は「若者不足」…日本を襲った2つの不運

多くの読者がご存知の通り、日本の歴史の中で、定年延長の議論は今回が初めてではありません。1986年の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正により、それまでの55歳定年を60歳まで延長することが努力義務化され、続く1994年の改正により60歳未満の定年退職が禁止(1998年施行)されました。その際の定年延長に引き続き、今回が2回目ということになります。しかし、前回の定年延長と時代背景が決定的に異なるのは、少子化の進展に他なりません。

 

1980年代に定年延長が議論された際、日本の人口問題にはまだ希望がありました。それは先ほど少し触れた第二次ベビーブーム世代の存在です。この世代がまだ中高生だったため、彼/彼女らが社会人となり、安定的な収入を得て結婚し、子供を産み育ててくれれば、第三次ベビーブームが起きるという希望的観測がありました。また、それを後押しするために、男女雇用機会均等法が1985年に成立し、女性が働き続けられる就労環境整備の動きも遅まきながら始まりました。

 

しかし、日本という国家全体にとって不運だったのは、第二次ベビーブーム世代が新卒で就職する時期と、バブル崩壊が重なったことです。日本企業が一斉に新卒採用を絞り、就職氷河期が訪れました(ちなみに、就職氷河期はリクルート社による造語であり、1994年の新語・流行語大賞で審査員特選造語賞を受賞しています)。この就職氷河期が10年以上続き、第二次ベビーブーム世代とその後の世代の新卒就職活動を丸ごと飲み込んでしまいました。

 

ちょうどこの頃に日本に定着した言葉が「フリーター」です。図表2をご覧いただければ分かる通り、バブル崩壊以降、日本企業における非正規雇用者の割合は上がる一方です。新卒時の就職活動で安定的な収入を得られる仕事に就けず、その後、挽回もできず、家庭を持つこと自体が生活リスクとして若者に捉えられるようになってしまいました。中高年の引きこもりや8050問題(80歳代の親が50歳代の子供の生活を支えなければならない状況)の一因にもなっています。

 

出所:総務省統計局「 最近の正規・非正規雇用の特徴」(2015)
[図表2]日本企業における非正規雇用者の割合 出所:総務省統計局「 最近の正規・非正規雇用の特徴」(2015)

 

もちろん、ここで述べていることだけが日本の少子化の理由のすべてではありませんが、大きな原因の一つであることは間違いないでしょう。

 

私自身が第二次ベビーブーム世代の1人のため、時代への怨嗟の念から話が長くなりました。日本の総人口は2008年の約1億2800万人をピークに減少を続けています。2019年時点ではまだ1%程度の減少ですが、若者の数だけで見ると以前に比べて半分以下になっていきます。第二次ベビーブーム世代が既に50歳前後になっていますので、今から子供の数が増えることも期待薄です。

 

今後、日本企業が国内の若者を安定的に採用することは困難になる一方であり、少なくとも数十年間は若手人材の獲得競争が続くでしょう。

 

 

石黒 太郎

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部 組織人事戦略部長・プリンシパル

 

 

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三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 コンサルティング事業本部 組織人事戦略部長・プリンシパル

1973年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、1996年、株式会社デンソー入社。以来17年間、人事部門に在籍し、うち約4年半を北米生産法人の人事・総務部門の責任者として海外駐在。

その後、事業部門の事業企画管理職を経て、2016年、コンサルタントにキャリアチェンジ。人事の実務および管理職としての国内外での経験、ノウハウ、現場感覚に基づき、顧客目線に立ったサービスを提供している。

著者紹介

連載令和時代、「シニア活用」こそ企業存続のカギ…失敗しない定年延長

失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために

失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために

石黒 太郎

光文社

シニア活用こそが、人材不足解消の最後の砦。 「定年延長」に失敗すれば、日本経済は必ず崩壊する…。 少子化の進展により、日本の生産年齢人口は急激に減少中。さらに、バブル期入社組の大量定年退職が秒読みに入ったこ…

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