糖尿病内科ラウンドで「美味しいお店に行ける」
そしてもう一つ、ローテーション先として選びたくなるような”魅力的な“イベントの実施も糖尿病内科では隠し玉として準備しました。昔から、医局員の歓送迎会や忘年会なども含めて、毎月1~2回、医局員みんなで飲みに行くことが伝統的に続いていました。
ただ、赴任当初はみんなの仕事が終わる時間がかなり遅かったので、歓送迎会であっても遅くまでやっている近隣の大衆居酒屋しか選択肢がないようなこともありました。それが、私が着任して2年ぐらい経つ頃になると、18時頃にはみんなで病院を出られるようになっていたので、病院からは少し離れている三島・沼津や修善寺に、医局員全員で飲みに行けるようにもなっていました。
この医局員全員での食事会に研修医も必ず連れて行きました。ご存知の通り、三島、沼津や修善寺は、美味しい海産物や農産物に恵まれています。共に働く医局員たちと一緒に、伊豆という日本有数の観光スポットを楽しめることは、我々にとって大きな活力ともなりました。
そして、この食事会は研修医から予想以上の反響がありました。他の診療科をラウンドしている時にはなかなか定時で帰宅できず、ましてや仕事終わりに、車で30分程度かかるところまで夕食を食べに出かけていくことは、現実的に難しい状況でした。
ひと昔前のように、製薬メーカーからの接待なども昨今は一切なく、ローテーションしている診療科の医師たちと飲みに行くことがあっても、遅い時間からいつもと同じ近場の居酒屋になることはやむを得ないことでした。
このため、多くの研修医は2年の研修期間ずっと、研修病院の周辺、それも徒歩圏内のお店でしかほとんど飲食していなかったのです。伊豆に来ても病院と宿舎の往復だけで、この地ならではのおいしいものなどを楽しむ機会がほとんどないのはやはり何とも寂しいものです。
それが、「糖尿病内科をラウンドすれば、伊豆半島の美味しいお店に連れて行ってもらえるらしい」そんな噂があっという間に静岡病院の研修医室で広まっていきました。そのため、我々が思っている以上に、研修医たちは楽しみにしてくれているようでした。
実際に飲み食い目当てで当科を選択したか否かは定かではありませんが(苦笑)、当科を選択する研修医はどんどん増えていき、最終的には年間12人以上の研修希望が来てくれるようになりました。最近では、もっと多くの数の研修医がラウンドしてくれているそうです。
研修医には、初診の患者さんや入院の患者さんの診察や問診を行ってもらい、アセスメントやプランも立ててもらいました。そして、必ず医局員からフィードバックを行うようにもしました。このフィードバックも研修医たちに非常に好評でした。
こういった取り組みにより、結果的に医局員の初診患者対応に費やす業務量は格段に抑えられ、業務効率は飛躍的に向上しました。そして同時に、医局員全員の残業時間削減にも直結しました。
しかも、初診外来の待ち時間も短縮され、患者さんたちの負担さえも減っていったのです。
今まで以上に地域の先生方からの紹介患者数が増えたのは、こういった初診患者さんの対応向上も寄与していると考えられます。