Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名です。FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグは本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性にますます注目されていて、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。本連載は秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

将来に向けていかにあるべきかを構想する

今後、人工知能やロボット、あるいはブロックチェーンといった最新のデジタル・テクノロジーが私たちの働き方や生活を大きく変えていくでしょう。

 

そのような時代だからこそ、改めて人間のあり方を根本から考えて、将来に向けていかにあるべきかを構想してビジネスを組み立てていくことが求められています。

 

秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)
秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)

特に、現代アートは、「現在の人間像について多角的に考えて、未来に向けて、さらなる可能性を持つ新たな人間像を求め、人間の概念を拡大することに挑戦する試み」であるということができます。そう考えると現代アートの思考法には、新しいことに挑戦し、クリエイティブな発想を展開したいと考えるビジネスパーソンにとっても非常に可能性があると思われます。

 

今日のアートは、旧来のような人間の内面世界を表現するだけのものでなく、テクノロジーやデザインと結びつき社会的な課題に新たな提案を行う、あるいは、現代思想と結びつき次の時代の社会のあり方を構想するといった思考実験の場所でもあるのです。感性に訴えかけると同時に、ロジカルに伝えるコミュニケーション・ツールとして、実社会においても、新たな価値の創造に寄与する存在でもあります。

 

その出発点となるアート思考は、現状を打開するため、従来とは異なるステージで活躍するために、必要不可欠な視点となります。

 

アート思考の本質

 

最近のアート教養ブームで、オフィスにアート作品を飾り、美術館やギャラリーに足を運ぶ経営者やビジネスパーソンが多くなったように思います。この流れは、アートの魅力を再確認するいい機会にもなっています。実際、知識、教養としてのアート以上に、アートを通じて自分を磨き、本来、人間が持つ感性や感覚といった自身のポテンシャルを引き出すことが大切で、自らの未知の可能性を引き出す方法につながります。

 

 

しかしながら、注意しておくべき点があります。アートやアーティストから学びを得られることは数多くありますが、基本的には、ビジネスとアートは大きく異なっているのです。

 

アーティストは経済的に成功したからといって、アートが成功したとは、考えません。ビジネスであれば、売上金額や利益、時価総額などの指標を目安にしなければ、会社経営はできないでしょう。つまりビジネスにおいては、「儲かることが成功である」という基準が成り立ちます。

 

しかし、アートに求められるのは、経済的・社会的成功ではなく、やむことなき自己探求をし続けることです。社会に対する問題提起、つまり新たな価値を提案し、歴史に残るような価値を残していけるかどうかという姿勢を極限まで追求することが、アーティストの願望なのです。

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アート思考

アート思考

秋元 雄史

プレジデント社

世界の美術界においては、現代アートこそがメインストリームとなっている。グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられている。 現代アートが提起する問題や描く世界観が、ビジネスエリートに求められ…

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