アートとビジネスは深いところで響き合っている
シリコンバレーのイノベーターたち
アメリカのビジネスシーンでアートに注目が集まった理由は、シリコンバレーなどで新たなビジネスを生み出して、成功を遂げてきた人々の多くがアートの素養を持ち合わせていたことと無関係ではありません。
アップルの創業者スティーブ・ジョブズは、文字のアート、カリグラフィーを学んでいたことで知られています。旧米ヤフー(現アルタバ)の元CEO、マリッサ・メイヤーが影響を受けたのは、画家である母親でした。
Airbnb(エアービーアンドビー)の創業者の1人、ジョー・ゲビアも学生時代にアートを勉強し、アクションカメラをヒットさせたGoPro(ゴープロ)の創業者、ニック・ウッドマンも視覚芸術を学んでいました。
スクエアを2009年の創業からわずか10年で時価総額200億ドル超に成長させたジム・マッケルビーにいたっては、自らがガラス工芸などを手がけるアーティストでもあり、彼のデザインしたスクエア・リーダーはMoMA(ニューヨーク近代美術館)にも展示されています。
そうしたイノベーターたちが共通してアートをたしなんでいたため、アートとビジネスの関係が指摘されるようになったのです。
実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っています。
例えば「アートとは、ゼロから価値を生み出す創造的活動であり、ビジョンと、それを実現させるための内なる情熱が必要」なものですが、この「アート」を「アントレプレナーシップ」に置き換えてみましょう。すると「アントレプレナーシップとは、ゼロから価値を生み出す創造的活動であり、ビジョンと、それを実現させるための内なる情熱が必要」となります。ビジネスに関わっている人にとってもまったく違和感はないでしょう。先に挙げた世界のイノベーターたちは、ビジネスの世界で成功を収めたアーティストでもあるのです。
アーティストが作品を創作するときは、常にゼロベースでものを考えますが、ビジネスの世界においても、既成概念にとらわれることなくゼロから創造してきた人々がいました。それが先ほどのスティーブ・ジョブズであり、ジョー・ゲビア、ニック・ウッドマンであり、ジム・マッケルビーだったのです。
この社会に新たな価値をもたらし、社会に影響を与えてきた人々は、数学や工学からアートまで、横断的な知識を身につけていました。
今後そうした複合的な人材は、ますます多方面で必要となってくるはずです。